あえて歩かせない――準国産ヒューマノイド「D1」登場、現場稼働で日本の勝ち筋へ協働ロボット(2/2 ページ)

» 2026年08月07日 06時45分 公開
[安藤照乃MONOist]
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「準」国産とは? 部品は米国、中国、日本などから調達

 ジールスはD1の開発において、全ての部品を国内で製造する純国産ではなく、準国産というアプローチをとった。ハンド部分やアクチュエータ(駆動部)、バッテリーは中国製であり、その他の部品類も米国や中国、日本などから調達している。一方で、AIやソフトウェアの開発、機体の制御、組み立て、現場への導入プロセスは日本国内で主導する手法を採用している。なお、現在の組み立てはジールスの目黒オフィス内で行っているという。

 清水氏はこの点について、「現段階で純国産にこだわった場合、開発期間の長期化や機体価格の高騰により、現場での稼働はかなり先になる。まずは世界水準の部品を用いていち早く実機を作り、実運用を通じて蓄積したデータやノウハウをもとにフィジカルAIを実装する。将来的には国内サプライヤーと連携し、純国産ヒューマノイドの実現を目指している」と説明する。

 D1の本体価格は1体500万円(税別)〜に設定した。本体価格に加えて、OS利用料の月額10万円と保守サポート費用の月額10万円を月額費用として定めている。

技術開発や投資では米中がリード、日本の勝ち筋は「現場データ」

ジールスの清水正大氏 ジールスの清水正大氏

 ジールスは2014年創業、これまでにコミュニケーションロボットの研究開発や、会話型AIの開発などを手掛けてきた。清水氏は米国、中国など世界のフィジカルAI開発の最前線を視察する中で、「技術開発や投資の領域では、米国と中国が世界を一歩リードしている。一方で、日本は少子高齢化による人手不足や複雑な業務オペレーション、限られた屋内空間といった、ロボットが実用化されるための課題と条件が最も凝縮されている」と語る。

 フィジカルAIを社会実装し進化させるためには、機体を現場へ導入するだけでなく、インターネット上には存在しない「現場データ」の継続的な収集が不可欠となる。テキストデータを学習する大規模言語モデルとは異なり、ロボットの動作モデルの構築には、実際の作業空間における映像や、物体に触れた際の力加減、減速のタイミング、アームを動かす角度といった物理的なデータが必要となるからだ。

 そこでジールスは、ハードウェアからシステム基盤までの垂直統合型開発し、独自のデータを直接収集する仕組みとした。中核システムとして、ヒューマノイド向けの統合オペレーティングシステム「Omakase OS」と、知能基盤「Omakase Zen」を開発した。

 Omakase OSは、音声対話や視覚認識、自律ナビゲーションなど機体の機能を統合的に制御する役割を担うヒューマノイド専用のOSだ。Omakase Zenは、米国で開発された既存のオープンモデルをベースに事後学習を施した、マニピュレーション(操作)AIモデルである。ハードウェアとこれら2つのソフトウェアを垂直統合することで、動作の評価と改善が繰り返され、ロボットが対応可能なタスクを段階的に拡張できる仕組みだ。

2026年度に100台量産、累計1万時間の現場稼働を目指す

 D1の社会実装に向けて、ジールスは医療、保険、リース、デプロイメントの4領域のパートナー企業と連携体制を構築した。これにより、機体の導入から運用支援、リスク補償、資金面までを包括的にサポートする。具体的なユースケースについて清水氏は、「まずは医療や介護現場での案内や見回り、配膳補助を想定している。同時に、製造業の工場や物流現場などにおいても、特定のタスクの代替として活用を広げていきたい」と語る。

 発表同日の8月5日に販売を開始し、同年10月に初回ロットの出荷を予定している。今後100台、1000台規模へと拡大するフェーズでは、パートナー企業と連携した製造体制への移行も検討している。「今回のD1を完成形とするのではなく、稼働現場からのフィードバックを継続的に反映し、機体や機能の部分的なチューニングを重ねていく」(清水氏)。

D1と清水氏 D1と清水氏[クリックで拡大]

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