続いて、インテル米国本社 インダストリー&ロボティックス事業部 事業部長のリッキー・ワッツ(Ricky Watts)氏が基調講演に登壇し、インテルのロボティクス/フィジカルAI戦略について説明した。
ワッツ氏は「あらゆる産業でフィジカルAIが必要とされている。AIはクラウドから、製造業、ヘルスケア、サービス、小売りなどの現場、つまり『エッジ』へと急速に移行しており、その中核がフィジカルAIだ」と述べた。インテルは生産性の向上、品質改善、電力最適化といったアウトカムに主眼を置いているという。そして、既存のインフラを置き換えるのではなく近代化するアプローチを強調。人間とAIが協調する未来の工場の実現を目指していると語った。
ワッツ氏はAIをクラウドから現場へ移すためには、高度なカメラ/センサー技術、Core Ultra シリーズ3のようなエッジコンピューティング技術、柔軟で仮想化されたアーキテクチャを実現するためのソフトウェアデファインドのオートメーション、時間的な確実性(デターミニスティックな結果)を保証するリアルタイムネットワーキングといった技術が必要になるとした。
インテルは、世界中の重要インフラの多くが既にインテルの技術で構築されている事実を重視している。これらx86プラットフォームで構築された基盤の上に、GPUやNPUといった新機能を積み上げ、既存の運用技術を捨てて完全に置き換えるのではなく、進化させることで、安定性と信頼性を維持しつつAI機能を統合することが重要だという。
技術面で、インテルはAIのアクションを時間内に確実に実行するために、シリコンファブリックから通信規格まで多層的な技術を提供している。
具体的には、AIが制御資産に送る指示を時間内に確実に届けるための「管理された時間」を実現する「TSN(Time-Sensitive Networking)」、異なるコンピューティング資産間で時間を同期/管理する「TCC(Time Coordinated Computing)」技術、そして−40℃から高温環境まで、過酷な環境下で10〜15年の長期稼働に耐える設計、継続的な性能向上などを挙げた。インテルの今後の製品はカバー領域やユースケースがさらに増えるようポートフォリオを拡大していき、開発ツールも併せて提供される。
ただし「AIの導入は1社で完結できるものではない」(ワッツ氏)。異なるハードウェア、ソフトウェア、アプリケーションが連携できるよう「OPC UA」のような標準をサポートすること、物理的な事故を防ぐための安全認証や高度なセキュリティを備えたプラットフォームを提供すること、強力な競合他社のツールを使用しているユーザーであっても、インテルのプラットフォーム上で最適に実行できるよう、オープンなフレームワークを提供することが重要だ。
ワッツ氏は講演の最後で「未来の工場はフィジカルAIによって支えられているが、同時に人間によって支えられるだろう。人間は常にループの中に存在し続ける。未来の工場はより効率的になると同時に人間とAIが協働する場でもある」と語った。
インテルのフィジカルAIの開発環境である、OpenVINO Physical AIやPhysical AI Studioなどについては、インテル シニア・セールス・アプリケーション・エンジニアの小原成介氏が紹介した。
インテルのエッジマーケットへの取り組みは約40年前にさかのぼる。初期は産業用コントローラーなど固定機能の組み込み機器が中心だった。それがIoT(モノのインターネット)ブームを経て、AIが映像内の状況を理解するようになり、現在は言語モデルベースの生成AI、そしてフィジカルAIへと広がりつつある。市場予測では2050年までにフィジカルAIの浸透によってロボットの台数が10倍に増えて41億台に達すると予測されている。これは年平均で10%の成長が見込めることになり、インテルもこの領域を重要な成長機会があると考えている。
インテルの強みは、サーバ級の「Xeon」から、省電力の「Core Ultra」「Atom」に至るまで、同一アーキテクチャで幅広いスケーラビリティを提供できる点にある。これにより、消費電力が数Wの小型デバイスから高出力サーバまで、シームレスな展開が可能になる。
産業グレードの信頼性もインテルの強みである。広範な動作温度保証と、10〜15年にわたる長期供給体制を維持しており、ハードウェアレベルでデターミニスティックな動作を実現している。機能安全に対応した制御用CPUを提供しており、WindowsやLinux環境において、最も安定して動作するプラットフォームとしての実績もある。
また、CPU、GPUに加え、AI専用の内蔵NPUを搭載した製品を強化している。特に、2024年から導入された「Core Ultra」ブランドは、急速な進化を遂げており、最新のCore Ultra シリーズ3は第1世代と比較して内蔵GPU性能が6倍以上、内蔵NPU性能が4倍以上。イメージ分類、LLM、VLAなどによるAIモデルの実測値比較では、NVIDIAの組み込みAIボード「Jetson AGX Orin」に比べて1.7倍から最大4.5倍の性能を発揮するケースが確認されているという。
フィジカルAI向けソフトウェアツール群として、インテルはモデルの「学習」ではなく、エッジでの「推論/デプロイ」および「ファインチューニング」に重点を置いている。推論とデプロイに特化したオープンソースのツール群として2018年から提供しているのが「OpenVINO」で、ビジョンAIモデルの最適化と高速推論を実現する。さらに、生成AIモデルの運用に機能を拡張した「OpenVINO GenAI」、AIモデルの推論とカメラ/センサーの応答制御を統合するデプロイツールであるOpenVINO Physical AIへと発展している。
学習/調整用ツールとしてはビジョンAIモデル用のファインチューニングツール「Intel Geti」、模倣学習のデータ収集とトレーニングをGUIで行えるツール「Physical AI Studio」を提供している。Docker環境下で動作し、ブラウザベースの直感的なUIを通じてロボットの模倣学習を可能にする。
小原氏は実際に、Dockerを起動してプロジェクトを作成し、ロボットやカメラを設定してデータ収集したり、モデルを選択してファインチューンしたりする一連のフローをデモンストレーションで紹介した。
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