この例で示したような思い込みによる現場の問題はどこでも起こり得ることです。その場合「問題が発生するのは現場や取引先の努力が足りないからだ」という発想になりがちですが、少し立ち止まって客観的データで考えてみてほしいのです。
今回、アセスメントツールにより気付いた課題に対し、大きく分けて、以下の2つの取り組みにより、受注納期の改善を進めました。
よく考えるともっともなことではありますが、そもそも無理のある要求を全て受け入れても、結果的に納期遅延が多く発生していたのですから、現実的で確実な納期がはっきり提示されることは、得意先にとっても大きなメリットになります。
この2つの取り組みの結果、在庫が大きく削減されただけでなく、購買部門をはじめとする間接部門の残業もほとんどなくなり、組織全体の人員構成まで適正化されるという副次効果も生まれました。こうして生まれた余力を活用することで、以前から課題となっていた事柄も、次々と改善されていったそうです。
在庫や納期の課題は、モノづくりのプロセス全体に潜むさまざまなゆがみが形となって現れた結果です。在庫の課題を解決するためには、その原因に直接アプローチしなくてはなりません。
こうした要因はさまざまな部門にまたがっていることも多くあります。関係者みんながうすうす気づいている要因であるほど、実際のデータで示されたときには、議論が深まり対応を進めやすくなります。在庫や納期に課題を感じており、要因に心当たりがある場合には、ぜひデータを活用して課題に取り組んでみましょう。
なお、自分の担当業務であればあるほど、「きっとこうだろう」「原因は分かっている」と初めから結果を想定してしまいがちです。そして、実際にデータで予想通りの結果が出ると「やっぱりね」と納得することのほうが多いでしょう。
この「分かっている」と思い込むことが、DXを阻む「わな」になります。その表層的な思い込みが、裏にある根本的な構造改革のチャンスを逃すことにつながってはいないでしょうか。何となく分かっていることだからこそ、数値やデータで明示し部門を越えた共有知にすることで、それぞれの部門での改善が進むのです。ぜひ一度、自社のデータを主観抜きで眺め、現実的な議論の基礎にしてみましょう。
ビジネスエンジニアリング
プロダクト事業本部 カスタマーDX推進部 部長
生産/販売/原価管理システム「mcframe」のユーザー会(mcframe Users Group: MCUG)の運営を事務局担当として20年間にわたり支えるとともに、現在は200社を超える製造業会員各社の課題解決とDX推進に尽力している。また、モノづくりとITのコンソーシアムやコミュニティーなどにも複数参画し、特にPLMやSCMに関する分科会では、積み重ねた知見を提供するとともに見識を広げ、設計製造連携や原価管理のセミナー講師も担当している。
ビジネスエンジニアリングでは、製造業の顧客向けに業務改革構想ならびにシステム化企画、ERPシステム導入のプロジェクトを数多く手掛け、その後「mcframe」の商品企画・開発ならびに導入にも従事している。
著書に「儲かるモノづくりのためのPLMと原価企画」(東洋経済新報社)。イベント講演「mcframeとユーザー会(MCUG)を通じてわかった『SCMシステム導入の真の価値と効果的な活用』」のモデレーターも務めた。
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