見えない仕事を可視化する「自己申告法」と間接業務を効率化する「帳票分析法」現場改善を定量化する分析手法とは(20)(3/3 ページ)

» 2026年07月24日 08時00分 公開
前のページへ 1|2|3       

2.4 帳票分析における主な留意点

 帳票分析を行う際の留意点について、前ページの図2の「帳票分析の手順」に示す各ステップに従って以下にまとめましたので参考にしてください。

(1)ステップ1:フローチャートの作成

 まずは、フローチャートを作成するわけですが、分析対象となる請求書、領収書、日報なども含めたあらゆる帳票を収集します。次に、帳票がどの部門の誰によって作成され、それが誰の手に渡り、どう使われていのるかなどを可視化していくステップになります。

(2)ステップ2:帳票類の分析

 各帳票について、そもそも帳票を作成する目的に即しているかを確認します。併せて、記載されている各項目やデータは本当に必要かなども確認し、記載項目や作成時間の削減などの改善につなげていきます。

 さらに、季節や月ごとに作成量に増減の差はあるか、担当者ごとの帳票の作成負荷の偏りの差などを子細に観察して、問題の根本原因は何かを考えていきます。

(3)ステップ3:帳票類の内容分析

 帳票類の内容分析では、作成された個々の帳票の役割と目的の確認を行います。例えば、どのような目的で作成されている帳票か、その帳票をどこの部門あるいは誰がどのように活用しているか、現状の状況を鑑み作成目的に合致して機能しているか、などの視点で内容を確認していきます。

(4)ステップ4:帳票類の問題点の顕在化

 帳票類の問題点を発見して顕在化していくことは、数値化しにくい物事の良しあしを状況に応じて選択していく属人的な感覚に頼る判断力を必要とします。多くの場合、それぞれの人の経験と知識で育まれた能力が大きく影響するため容易ではありません。そこで、次に挙げた代表的な項目でチェックを行うことで、容易にその目的を達成することができます。

  • (a)記載されている項目の意味や定義は明確に説明されているか
  • (b)帳票類の記入や作成方法は標準化されているか
  • (c)帳票類がトレーサビリティーの確保に役立てられる仕組みになっているか
    トレーサビリティーとは、製品などがいつ、どこで、誰によって生産あるいは加工されたかを記録に基づいて追跡できる状態のことです。主に安全性の確保や不良品の回収、法令順守、品質保証のために活用されます
  • (d)帳票を作成する際に、機械入力が可能な項目を手書きするなどの無駄はないか

(5)ステップ5:改善案のまとめ

 改善案のまとめは、結局のところ改善の方向性を導くことにあります。例えば、帳票作成の遅延、人や工程への負荷の偏りの原因はどこにあるか、標準化や自動化などの合理化によって業務の効率化が図れる部分はないか、などの視点がポイントとなります。

2.5 帳票分析による成果

 帳票分析を行うことによる最終的な成果としては、まず重複作業や手作業の削除による無駄の排除が挙げられます。次にくるのが、作業標準化と属人化の解消です。また、事実に基づいた意思決定や将来に向けての業務のシステム化、データの収集や帳票作成そのものの機械化などへもつなげていくことが可能となります。

 更には、KPI(重要業績評価指標:Key Performance Indicator)の設定なども成果として挙げられます。KPIは、目標達成度を測るために設定する定量的にモニタリングが可能な主要指標のことです。売り上げや利益だけでなく、行動量や品質などと具体的な因果関係のある指標を選び、目標値などを明確にして継続的に改善するためのマネジメント手法で、そのフレームワークであるPDCA(Plan→Do→Check→Action)にのっとって運用します。

2.6 帳票類改善の主な方法

 帳票類の改善としては、以下の2つの方法がよく用いられます。特に(2)の「演繹法(Deduction)」は、論理的思考の一つで、簡単に言うと「ルールから結論を出す」方法です。一般論やルールを具体的な事象に当てはめて、結論を導き出す手法です。メリットとしては、前提が正しければ結論は必ず正しくなります。この方法の注意点は、最初の「ルール」が間違っていると、結論も必ず間違ってしまうことです。

(1)クイック法

 部門ごとに作成している帳票類の現物を会議室などの壁に貼り付け、展示して、工場長や部課長などの責任者が帳票ごとに省略、結合、改善などをその場で決定していく方法です。

(2)演繹法

 工程フローチャートやQCフローチャートに対応した情報の流れを設計し、各情報処理の理想像を描き、あるべき帳票を設計する方法です。

◇     ◇     ◇     ◇

 企業内で使用されている帳票には、チェックシート、指示書、レポート、報告書、集計表などがあります。帳票分析で大切なのは、それらの大量の帳票類が真に活用されているかどうかです。

 何十年も前から存在する帳票類も多く、これらの多くは記録して回収することが目的となっていて、誰が何の目的で何に活用しているかが定かではない帳票もたくさん存在しています。このような状況が帳票を作成あるいは記録する当事者の人たちに分かってしまうと、その内容も何かが書いてあれば良いだろうという程度となり、中身の信ぴょう性が疑わしくなってしまいます。

 帳票分析の際には、帳票の作成目的や誰が何のために活用しているかが不明瞭な場合は、これらの帳票はすぐに廃止することをお勧めします。このような資料を「死料」といいます。「死料」とは、“使っていない”“どこにあるか分からない”“使えるかどうか分からない”など、「ないもの」と同じ扱いになっている帳票類のことです。換言すれば、「あるけれど、仕事に全く貢献していない帳票」が死料であり、このような状態の帳票類を指す言葉です。これらの帳票の作成を一度止めてみて、様子を見ることも一つの改善方法です。

筆者紹介

MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)

日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。



前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
Special SitePR
あなたにおすすめの記事PR