カクイチではこうした活動が定着するまでに、いくつかの工夫も取り入れている。まずは「感謝を送る」経験をしてもらう必要があることから、「ユニポス聖火リレー」として全社員がユニポスを利用するような促進策を実施した。さらに、人事評価制度を変え、感謝を送った行為を集計し、チームごとの貢献度評価を行うようにした。「個人評価だとやらない社員も出てくるが、チームでの評価としたことで、当初は消極的だった社員も参加してくれるようになった」人事改革を推進するカクイチ CX推進グループ 財務・総務マネジメント チームリーダーの村仲巧氏は語る。
こうした感謝のネットワークを把握することは、参加する社員のコミュニケーションを活性化するだけでなく、従来の評価制度などでは見えない人間関係や、部門間協力、表に出にくいトラブルの存在などを企業として把握するのにも役に立つという。
「この仕組みを入れたことで新たなコミュニケーションが生まれたケースもあれば、見えていなかったネットワークを把握できたケースもある。また、現場で何らかのトラブルが発生し、それを解決した場合、そこに協力した関係者間で今までになかった『感謝』のやりとりが発生することになる。こうした動きを見ると、トラブルの対応状況の把握などにも役立つ」と村仲氏は述べている。
これらを見ると、本当の意味で情報発信力がある人や、生きた情報を持つ人などの把握も可能だ。「感謝のネットワークを見ると、必ずしも管理職がネットワークの中心になっていないことも多い。それを考えると、従来型の上意下達型で管理職が情報を管理するという組織のやり方では当てはまらないことが分かる。情報を管理する役割は不要で、リーダーの形を変えることにもつながる。自律分散型ネットワーク組織へ進化させることができる」と田中氏は述べる。
さらに田中氏は「助け合う文化が生まれたことで、社員が積極的なチャレンジを行いやすい環境が整い、DXなども進んだ」と手応えについて語る。
例えば、樹脂ホースの倉庫では、自動倉庫の移動を音声認識で行えるようにしたり、棚卸をRFIDによる遠隔読み取りで行う仕組みなどを構築し、生産性を大幅に高めることに成功したという。さらに、読み取り精度を高めるために、従来電波が届きにくかった上段でも正確に情報が取得できるように天井部分にミラーボールを設置。実際にミラーボールを回すことができるようにする遊び心も発揮している。
感謝のネットワークを土台とした組織変革や社員のチャレンジ意欲の向上は、変化の激しい時代に製造業が競争力を高める上で重要な取り組みの一つといえそうだ。
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