武田薬品工業が製造DXの事例を紹介、2023年は作業時間を年間11万時間削減工場ニュース(1/3 ページ)

武田薬品工業は、グローバルプログラム「Factory of the Future」の一環で進める製造デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを紹介した。

» 2024年09月06日 10時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 武田薬品工業は2024年9月5日、東京都内で記者会見を開き、グローバルプログラム「Factory of the Future」の一環で進める製造デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを発表した。

Factory of the Futureの概要

 Factory of the Futureは、同社の全製造拠点が、それぞれの機能や製造する医薬品に基づき作成されたロードマップに沿って、「デジタル教育の強化と変革の推進」「生産性や効率性の追求」「デジタルと自動化」といった3つの点で変革を行うプログラムだ。このプログラムでは、医薬品製造の効率性と安全性の向上、品質/コンプライアンスの強化、付加価値の創造を促進させることを目的としている。

「Factory of the Future」プログラムの全体像 「Factory of the Future」プログラムの全体像[クリックで拡大] 出所:武田薬品工業

 「デジタル教育の強化と変革の推進」では、各工場に設けられたロードマップを遂行し、生産品質の向上と安定供給、競争力の維持のために必要な役割、組織構造、能力を定める。

 「生産性や効率性の追求」では、製造/試験のプロセスに焦点を当て、改善点や新たなニーズを特定し、従業員の意見を取り入れながら、継続的な改善や効率化の向上を強化していく。

 「デジタルと自動化」では、データサイエンスとデジタル技術への投資を加速させ、製造プロセスやオペレーションのさまざまな側面でDXに取り組み、自動化、AI(人工知能)、デジタルツイン、ビッグデータ解析、データの統合と民主化、予測能力などを強化していく。AIや自動化は、従業員がより価値を創造する業務に注力するために使用する。

 これらの取り組みにより、利用者が必要とする医薬品をより迅速に安定供給することを目指している。

 さらに、各工場の要望を効率的に取り込み同社全体に展開するプロセス「デジタルイノベーションフレームワーク」と、開発したソリューションを広く可視化する専用Webサイト「グローバルマーケットプレース」を導入した。

Factory of the Futureにおけるイノベーション創発とグルーバル展開 Factory of the Futureにおけるイノベーション創発とグルーバル展開[クリックで拡大] 出所:武田薬品工業
同社 グローバルマニュファクチャリング&サプライ/グローバルクオリティーデータ デジタル&テクノロジー ヘッド ジャパンの石丸氏 同社 グローバルマニュファクチャリング&サプライ/グローバルクオリティーデータ デジタル&テクノロジー ヘッド ジャパンの石丸氏

 デジタルイノベーションフレームワークでは、各工場のオペレーターを「Tier1」、オペレーターの意見を取りまとめる管理者を「Tier2」、各工場のデータ、デジタル、テクノロジーのコミュニティーを「Tier3」、日本と外国のオペレーションユニットを「Tier4」、国内外のリーダーシップ会議を「Tier5」と定義。Tier1からTier2、Tier3、Tier4、Tier5の順に新しいソリューションのニーズを伝達および承認を行い、Tier5で承認の後、新しいソリューションの開発を担う部門「イノベーションエンジン」でソリューションを開発する。

 同社 グローバルマニュファクチャリング&サプライ/グローバルクオリティーデータ デジタル&テクノロジー ヘッド ジャパンの石丸宏氏は「このような体制で工場における新ソリューションのニーズを探ることで、同様のニーズあるいは需要に応えるソリューションが国内外の他の工場にあるかをチェックできるようにしている」と話す。イノベーションエンジンで開発されたソリューションは、グローバルマーケットプレースに掲載され、国内外の工場の従業員が確かめられるようにしている。

武田薬品工業が製造DXで目指す姿 武田薬品工業が製造DXで目指す姿[クリックで拡大] 出所:武田薬品工業
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