多くの製造業が抱える組織のサイロ化や判断スピードの遅延などの課題に対し、DXと組織文化改革で変革を進め、組織スピードを4倍に高めたのが、ガレージや樹脂ホースの製造などを手掛けるカクイチだ。主にDXによる仕組みの変革の様子を伝えた前編に対し、後編では組織や人を結ぶ「感謝体質経営」への変革の様子を紹介する。
日本の製造業が抱える組織のサイロ化や判断スピードの遅延などの課題に対し、DX(デジタルトランスフォーメーション)や組織文化改革を推進し成果を残しているカクイチ。前編では、DXへの取り組みを含む仕組みづくりについて説明した。後編では文化改革として取り組む「感謝体質経営」について紹介する。
1886年創業のカクイチでは、多角化経営が進んだことで、組織間の横のつながりがなく、前例主義で組織の判断スピードも非常に遅い状況に悩んできた。そこで、2018年から組織変革に取り組み、全社共通の情報基盤の整備やクラウド改革などのDXを推進。さらに、組織のビジョンを共有する組織文化改革に取り組んできた。この組織文化改革の中核として取り組んだのが「感謝体質」を定着させ、社員の自然な協力体制や活動力を生み出す「感謝体質経営」への取り組みだ。
カクイチ 代表取締役社長の田中離有氏は「とにかく社内のカルチャーを変える必要があると考えていた。そこで、感謝を伝え合うということで小さなきっかけを作ることを考えた」と説明する。
そこで導入したのが、Unipos株式会社が展開する感謝を伝え合うためのサービス「Unipos」だ。Uniposは、従業員同士が感謝を伝え、メッセージとポイントを送り合えるサービスである。社内で感謝を受けることで得られたポイントは、ギフト券や自社で決めた褒章と交換できる。また、そのやりとりに反応(拍手)した場合も、感謝を送った人ともらった人双方にポイントを送る仕組みとなっている。
製造業では、新たなITツールの活用などに抵抗する動きが出る場合なども多いが、導入が始まると予想以上のスピードで活用が広がったという。「導入前は製造現場などから懸念する声も多かったが、いざ導入が始まるとあっという間に活用が広がった。従来は、それぞれが忙しそうで『ありがとう』が言いにくい環境だった。ツールを使うことで気軽に照れずに伝えられるようになり、結果としてコミュニケーションが活性化した」と田中氏は語る。
こうした仕組みを導入すると評価のために「感謝をもらう」ような動きなども生まれそうだが「最初は認知してもらうために説明などを行ってきたが、感謝をもらうのではなく送ったことを評価する制度としたことで、おかしな使い方にはならなくなった。また、そのやりとりを評価する『拍手』なども推奨したことで、三角型ネットワークを構築することで自然に会話が盛り上がるようになっている」と田中氏は説明する。
実際にこの感謝の送り合いを従業員も積極的に活用しているという。主な使われ方としては「職場内の横のつながり」「他職場への横のつながり」「グループ間での横のつながり」「経営層との縦のつながり」「見えない貢献への感謝」など主に5つの形で活用されている。
カクイチ建材工業 総務チームの依田英明氏は「自分の職場内や工場内で感謝によるコミュニケーションが生まれたことはもちろんだが、工場と営業所など今までつながりが薄かった部門とのコミュニケーションが生まれていることが大きい。また、食堂の清掃など職場をよくする行動に自然な形で感謝を伝えられる点も好評だ」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製造マネジメントの記事ランキング
コーナーリンク