半導体イノベーションセンターの設立には半導体市場の急拡大も関係しているという。現在、半導体市場はAI(人工知能)が需要をけん引している。世界のデータセンターの電力需要は、2030年に945TWhに達する見込みだ。945TWhは日本の総電力需要に相当するほどの電力で、この問題を解消するために半導体の高性能化が求められている。
こうした背景もあり、半導体はさらなる微細化/高機能化が求められているが、前工程の微細化は物理的な限界を迎えつつある。そのため、半導体の構造変化や後工程/パッケージ領域の技術進化が必要となっている。「このような経緯もあり、材料もゲームチェンジの局面で、高機能化や多様化、点数の増加、開発スピードの加速が重要となっている」(城詰氏)。
これらのニーズに応える目的でも半導体イノベーションセンターは設立された。同センターは、研究員の増員、評価設備の拡充、研究機能/技術の集約により、研究体制をさらに強化し、「ALD成膜材料の研究領域拡大」を行う。併せて、マテリアルソリューションセンター(埼玉県久喜市)で「後工程/パッケージ領域の開発加速」を実施する。
「ALD成膜材料の研究領域拡大」では、先端メモリの構造変化に伴い、より高アスペクト比(深く細い構造)や狭ピッチ化に伴う成膜と加工のニーズに対応する。
城詰氏は「電極間の干渉を防ぐ構造/材料が必要になる。この需要に対応するため、当社の強みであるキャパシター周辺の材料に加えて、電極や配線までの開発領域を拡大する。さらに、成膜評価を基盤とする次世代技術を提案するためには、当社の内部でもALD成膜プロセスなどの評価をできなければならない。材料を開発して提供するだけでなく、実際に膜をつけて解析し、提案することがスピーディーな開発に不可欠だ。次世代プロセスでは、基板選択的成膜(ASD)、原子層選択エッチング(ALE)、分子層堆積(MLD)などの制御技術が必要になってきている。これらに対応した材料を作ることが極めて重要だ」と触れた。
先端ロジックではトランジスタや多層配線の構造が3次元化し複雑化していく中で、2nm世代以降は新しい素材とALD技術との融合が鍵になるという。
「今後は装置の力だけでなく、化学的な構造解析を基にしたデバイス製造が進む領域になっている。当社はこれまでメモリ主体だったが、ロジック向けデバイスに関する提案も並行して進めてきた。ここに来てようやく当社の提案と顧客のニーズがリンクし始めていることもあり、ロジック向け材料のアプローチを加速させている」と城詰氏は胸を張る。
リソグラフィ材料では、最先端のEUV露光において微細加工で必須となる有効な材料を提供する考えだ。「当社がレジストを製造するのではなく、レジストメーカーに材料を供給する。これまでの化学増幅型レジスト(CAR)向け光酸発生剤(PAG)に加え、最先端の金属酸化物レジスト(MOR)の展開に注力する。当社がALD材料の研究開発で培ってきた金属の分子レベルでの合成/管理技術が、このMOR材料の開発/製造にそのまま応用できるため、業界をリードして突き進めると見ている」と城詰氏は明かした。
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