ADEKAが半導体の全領域カバーを加速、次世代材料の新研究拠点稼働研究開発の最前線(2/4 ページ)

» 2026年07月13日 07時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

材料の合成から成膜評価までをシームレスに

 同社は2026年5月に、成長領域における研究拠点としての役割を明確化し、研究開発力の強化を図る目的で、久喜開発研究所(埼玉県久喜市)を「ADEKAテクノロジーセンター久喜(ACT-S)」に、新研究棟(埼玉県久喜市)を半導体イノベーションセンターに、研究本館(埼玉県久喜市)をマテリアルソリューションセンターに、浦和開発研究所(埼玉県さいたま市)を「ADEKAテクノロジーセンター浦和(ACT-P)」、尾久中央開発研究所(東京都荒川区)を「ADEKAテクノロジーセンター東京(ACT-F)」に名称変更した。

2026年5月、新研究構想のもと研究拠点名称を再定義 2026年5月、新研究構想のもと研究拠点名称を再定義[クリックで拡大] 出所:ADEKA

 これまでADEKAの半導体材料研究は、尾久中央開発研究所を中心に行われてきた。しかし、半導体材料事業の成長に伴い研究スペースが手狭となり、人員の増員や新たな評価設備の導入、さらには注力テーマの拡張に制限がかかる事態に陥っていたという。さらに、クリーンルームなどの重要設備が複数箇所に分散しており、サンプルの運搬や実験のシームレスな進行において手間が生じていた。

半導体イノベーションセンター、2026年7月より本格始動 半導体イノベーションセンター、2026年7月より本格始動[クリックで拡大] 出所:ADEKA

 こうした問題を解消するために、2026年7月に本格稼働した半導体イノベーションセンターは地上7階建てで、延べ床面積は1万1545m2で、約150人の研究人員が所属しており、総工費は約120億円だ。同施設は、実験室、クリーンルーム、会議室、執務室、スキップフロアなどを備えている。

半導体材料の実験室 半導体材料の実験室[クリックで拡大] 出所:ADEKA

 同施設の実験室は、尾久中央開発研究所の実験室と比較して、実験スペースが2.7倍大きい他、高度な化学合成を行うため、ドラフトチャンバー(局所排気装置)などのフードで、臭気や有害ガスを除去する給排気システムが導入されている。屋上には、化学工場と同等レベルの化学物質の無害化処理設備も設置されている。

半導体イノベーションセンターの設計コンセプト 半導体イノベーションセンターの設計コンセプト[クリックで拡大] 出所:ADEKA

 さまざまなタイプの実験室が配置されているが、今回の発表会ではALDプリカーサなどの気化性を確認する実験室が披露された。この実験室は、合成や精製、気化性の確認を行うための実験台が約20ユニット配置されている。各ユニットの基本構成は同じだが、研究員がそれぞれの実験内容に合わせてカスタマイズして使用しているという。

クリーンルーム クリーンルーム[クリックで拡大] 出所:ADEKA

 クリーンルームの延べ床面積は、ワンフロアで850m2となっている。室内にはALD成膜装置などの製品評価機器が複数台設置されており、先端の開発テーマに対応している。クリーンルームの清浄度は「クラス10(1立方フィート当たり0.5μm以上のごみが10個以下)」だ。同社 常務執行役員 半導体材料本部長の芳仲篤也氏は「以前は分散されていた評価装置を集約したことで、材料の合成から成膜評価までをシームレスに完結できるようになった。将来の拡張に向けた余白スペースも確保されている」と触れた。

 各実験室で作製された半導体材料を速やかに解析するため、同施設の1階には、走査型プローブ顕微鏡(SPM)や電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)、赤外分光分析装置(IR)、顕微ラマン分光分析装置、単結晶X線構造解析装置(SCXRD)、X線CT、核磁気共鳴装置(NMR)を備えている。

 SPMは、カンチレバー先端の探針で試料表面をなぞり、微弱な応答をレーザー光で検出することにより形状や物性を画像化する装置だ。同装置は、光学顕微鏡では確かめられないナノレベルの形状を可視化や数値化することが可能で、物性の違いも見える化できる。

 FE-SEMは、電子ビームを試料表面に照射し、二次電子/反射電子を検出してナノレベルの微細構造を高分解能で観察する装置だ。同装置は、光学顕微鏡では確認できないナノレベルの形状/組成を可視化可能だ。同社では、半導体材料/ナノ材料の微細構造評価に活用している。

 IRは、分子が持つ固有の振動を、赤外線の吸収で検出する装置だ。同装置は、得られたスペクトルを解析することで、骨格や官能基などの分子情報が得られる。顕微IRは、顕微鏡下で微小領域に絞ったIR測定が可能だ。ライブラリーデータが豊富なため、物質の同定に使える。

 顕微ラマン分光分析装置は、レーザーを試料に照射し、分子振動に由来するラマン散乱光を検出することで、測定対象物を非破壊で分析できる装置だ。同装置は、得られたスペクトルを解析することで、分子の骨格や官能基、結晶状態の情報が得られる。サブミクロンレベルの微小領域を測定でき、ライン照明走査による迅速なイメージングが可能だ。

 4階の執務フロアは、フリーアドレスを採用しており、最大で350人が働ける環境を構築していることに加えて、自然なコミュニケーションが生まれるファミレス席なども用意している。

執務フロア 執務フロア[クリックで拡大] 出所:ADEKA

 2階と3階の間や3階と4階の間の中層階にスキップフロアが配置されている。スキップフロアは、研究員同士のコミュニケーションやプレゼンテーションが行える。

スキップフロア スキップフロア[クリックで拡大] 出所:ADEKA

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