「動力伝達要素」とは、モーターの動力を相手側の機構へ伝えるための機械要素です。代表的なものとして、次のような部品があります。
例えば、歯車は滑りがなく、正確な位置決めに適しています。一方、タイミングベルトは静かで、保守性に優れています。また、チェーンは比較的大きな力を伝達できます。
それぞれに長所と短所があるため、用途に応じた選択が必要です。ここでは、歯車の種類と使用場面、タイミングベルトの種類、歯車とタイミングベルトの特徴の違いについて表に示します(表3、表4、表5)。
| 歯車種類 | 特徴 | 軸の関係 | 主な用途例 | 選定時のポイント |
|---|---|---|---|---|
| 平歯車(スパーギア) | 最も基本的な歯車。歯が軸と平行で、製作しやすく低コスト。 | 平行軸 | 搬送装置、減速機、一般産業機械 | 構造がシンプルで初心者向け。ただし、かみ合い時の騒音が大きい。 |
| はすば歯車(ヘリカルギア) | 歯が斜めに切られている。静かで高負荷に対応しやすい。 | 平行軸 | 工作機械、自動車の変速機、産業用減速機 | 高速回転や低騒音が必要な場合に有効。ただし、軸方向荷重が発生する。 |
| やまば歯車(ダブルヘリカルギア) | 左右のはすば歯車を組み合わせた構造。軸方向荷重を打ち消せる。 | 平行軸 | 大型圧延機、大型減速機、船舶機器 | 大きなトルクを伝達できるが、製作コストが高い。 |
| かさ歯車(ベベルギア) | 軸の方向を変えられる。通常は90度で使用する。 | 交差軸 | 工作機械、自動車のデファレンシャル、搬送装置 | 回転方向を変えたい場合に使用する。 |
| まがりばかさ歯車(スパイラルベベルギア) | 歯が曲線状で静か。高負荷/高速回転に適する。 | 交差軸 | 自動車のデファレンシャル、産業機械 | 平歯のかさ歯車より高性能だが高価。 |
| ウォームギア | 大きな減速比を1段で実現できる。 | 直交軸 | 昇降装置、コンベヤー、回転テーブル | 大減速が可能。場合によっては逆転しにくいセルフロック効果がある。 |
| ラック&ピニオン | 回転運動を直線運動に変換できる。 | 回転運動/直線運動 | 工作機械、搬送装置、門型ロボット | 長ストロークの位置決めに適する。 |
| 内歯車 | 内側に歯を持つ歯車。遊星歯車機構で使用する。 | 平行軸 | 遊星減速機、自動車の変速機 | コンパクトで、大きな減速比を実現できる。 |
| 表3 歯車の種類と特徴(筆者解釈) | ||||
| 種類 | 特徴 | 主な用途 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| XL系(台形歯形) | 一般的に使われてきた標準的な歯形。歯が台形状。 | 小型装置、プリンタ、事務機器、軽負荷搬送 | 安価で入手しやすい | 高トルク用途には不向き |
| HTD(High Torque Drive) | 歯先が円弧形状。広く普及している歯形。 | FA装置、自動機、搬送装置 | 高トルクを伝達しやすく、歯飛びしにくい | XL系より高価 |
| STS(Super Torque Sync) | HTDを改良した高性能タイプ。 | サーボ駆動装置、産業機械 | 高精度/高寿命 | プーリとの組み合わせが必要 |
| GT(Gates Tooth) | 高精度な位置決め向けの歯形。 | ロボット、3Dプリンタ、半導体装置 | バックラッシが少なく高精度 | 比較的高価 |
| 表4 タイミングベルトの種類と特徴 | ||||
| 項目 | 歯車 | タイミングベルト |
|---|---|---|
| 動力伝達方式 | 歯同士が直接かみ合う | ベルトの歯とプーリがかみ合う |
| 伝達精度 | ◎ 非常に高い | ○ 高い |
| バックラッシ | 発生する | 比較的小さい |
| 位置決め精度 | ◎ 高い | ○ 高い |
| 騒音 | △ 比較的大きい | ◎ 静か |
| 潤滑 | 必要な場合が多い | 不要 |
| メンテナンス | 歯面摩耗や潤滑管理が必要 | 張力管理が中心 |
| 軸間距離 | 短い距離向き | 長い距離にも対応可能 |
| 衝撃吸収 | △ 小さい | ◎ 大きい |
| 伝達トルク | ◎ 大きい | ○ 中程度 |
| コスト | △ 高くなりやすい | ○ 比較的安価 |
| 小型化 | ◎ 有利 | ○ 可能 |
| 組み立て調整 | やや難しい | 比較的容易 |
| 表5 歯車とタイミングベルトの特徴の比較 | ||
例えば、モーターから300mm離れた位置にある軸に動力を伝えたい場合を考えてみましょう。
歯車で伝達する場合、複数の歯車や中間軸が必要になることがあります。一方、タイミングベルトであれば、プーリとベルトだけで比較的容易に伝達できます。逆に、高いトルクを伝達したい減速機や工作機械の主軸では、ベルトのたわみや伸びが問題となるため、歯車が選択されます。
と考えると分かりやすいでしょう。要素設計では、「歯車か、タイミングベルトか」を先に決めるのではなく、
といった要求仕様から、最適な機械要素を選択することが重要です。これは、要素設計の代表的な考え方の一つです。
次回も、機械要素について解説を続けます。 (次回へ続く)
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