要素設計とは何か 機械を成立させる部品の知識若手エンジニアのための機械設計入門(18)(3/3 ページ)

» 2026年07月06日 07時00分 公開
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(3)動力伝達要素

 「動力伝達要素」とは、モーターの動力を相手側の機構へ伝えるための機械要素です。代表的なものとして、次のような部品があります。

  • 歯車
  • タイミングベルト
  • チェーン
  • カップリング

 例えば、歯車は滑りがなく、正確な位置決めに適しています。一方、タイミングベルトは静かで、保守性に優れています。また、チェーンは比較的大きな力を伝達できます。

 それぞれに長所と短所があるため、用途に応じた選択が必要です。ここでは、歯車の種類と使用場面、タイミングベルトの種類、歯車とタイミングベルトの特徴の違いについて表に示します(表3、表4、表5)。

歯車種類 特徴 軸の関係 主な用途例 選定時のポイント
平歯車(スパーギア) 最も基本的な歯車。歯が軸と平行で、製作しやすく低コスト。 平行軸 搬送装置、減速機、一般産業機械 構造がシンプルで初心者向け。ただし、かみ合い時の騒音が大きい。
はすば歯車(ヘリカルギア) 歯が斜めに切られている。静かで高負荷に対応しやすい。 平行軸 工作機械、自動車の変速機、産業用減速機 高速回転や低騒音が必要な場合に有効。ただし、軸方向荷重が発生する。
やまば歯車(ダブルヘリカルギア) 左右のはすば歯車を組み合わせた構造。軸方向荷重を打ち消せる。 平行軸 大型圧延機、大型減速機、船舶機器 大きなトルクを伝達できるが、製作コストが高い。
かさ歯車(ベベルギア) 軸の方向を変えられる。通常は90度で使用する。 交差軸 工作機械、自動車のデファレンシャル、搬送装置 回転方向を変えたい場合に使用する。
まがりばかさ歯車(スパイラルベベルギア) 歯が曲線状で静か。高負荷/高速回転に適する。 交差軸 自動車のデファレンシャル、産業機械 平歯のかさ歯車より高性能だが高価。
ウォームギア 大きな減速比を1段で実現できる。 直交軸 昇降装置、コンベヤー、回転テーブル 大減速が可能。場合によっては逆転しにくいセルフロック効果がある。
ラック&ピニオン 回転運動を直線運動に変換できる。 回転運動/直線運動 工作機械、搬送装置、門型ロボット 長ストロークの位置決めに適する。
内歯車 内側に歯を持つ歯車。遊星歯車機構で使用する。 平行軸 遊星減速機、自動車の変速機 コンパクトで、大きな減速比を実現できる。
表3 歯車の種類と特徴(筆者解釈)

種類 特徴 主な用途 メリット 注意点
XL系(台形歯形) 一般的に使われてきた標準的な歯形。歯が台形状。 小型装置、プリンタ、事務機器、軽負荷搬送 安価で入手しやすい 高トルク用途には不向き
HTD(High Torque Drive) 歯先が円弧形状。広く普及している歯形。 FA装置、自動機、搬送装置 高トルクを伝達しやすく、歯飛びしにくい XL系より高価
STS(Super Torque Sync) HTDを改良した高性能タイプ。 サーボ駆動装置、産業機械 高精度/高寿命 プーリとの組み合わせが必要
GT(Gates Tooth) 高精度な位置決め向けの歯形。 ロボット、3Dプリンタ、半導体装置 バックラッシが少なく高精度 比較的高価
表4 タイミングベルトの種類と特徴

項目 歯車 タイミングベルト
動力伝達方式 歯同士が直接かみ合う ベルトの歯とプーリがかみ合う
伝達精度 ◎ 非常に高い ○ 高い
バックラッシ 発生する 比較的小さい
位置決め精度 ◎ 高い ○ 高い
騒音 △ 比較的大きい ◎ 静か
潤滑 必要な場合が多い 不要
メンテナンス 歯面摩耗や潤滑管理が必要 張力管理が中心
軸間距離 短い距離向き 長い距離にも対応可能
衝撃吸収 △ 小さい ◎ 大きい
伝達トルク ◎ 大きい ○ 中程度
コスト △ 高くなりやすい ○ 比較的安価
小型化 ◎ 有利 ○ 可能
組み立て調整 やや難しい 比較的容易
表5 歯車とタイミングベルトの特徴の比較

設計者の視点

 例えば、モーターから300mm離れた位置にある軸に動力を伝えたい場合を考えてみましょう。

 歯車で伝達する場合、複数の歯車や中間軸が必要になることがあります。一方、タイミングベルトであれば、プーリとベルトだけで比較的容易に伝達できます。逆に、高いトルクを伝達したい減速機や工作機械の主軸では、ベルトのたわみや伸びが問題となるため、歯車が選択されます。

  • 高精度/高トルク:歯車
  • 静音/長距離/低コスト:タイミングベルト

と考えると分かりやすいでしょう。要素設計では、「歯車か、タイミングベルトか」を先に決めるのではなく、

  • 必要な精度はどの程度か?
  • 必要なトルクはどの程度か?
  • 軸間距離はどのくらいか?
  • 騒音は問題になるか?
  • 保守性は十分か?

といった要求仕様から、最適な機械要素を選択することが重要です。これは、要素設計の代表的な考え方の一つです。

 次回も、機械要素について解説を続けます。 (次回へ続く)

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著者プロフィール

土橋美博(どばし よしひろ)

半導体組み立て関連装置メーカー、液晶パネル製造関連装置メーカーを経て、「メイドINジャパンを、再定義する。」有限会社スワニーに入社。CIOとして最新デジタルツールによるデジタルプロセスエンジニアリング推進に参画する。

ソリッドワークス・ジャパンユーザーグループ(SWJUG)、ワールドワイドのソリッドワークス・ユーザーグループネットワーク(SWUGN)のリーダーも務める。


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