3D CADが使えるからといって、必ずしも正しい設計ができるとは限らない。正しく設計するには、機械要素に関するアナログ的な知識が不可欠だ。連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では、入門者が押さえておくべき基礎知識を解説する。第18回は、機械を成立させる部品の知識である「要素設計」について取り上げる。
これまで本連載では、機械設計者が身に付けるべき「機械設計7つ道具」として、JIS製図、精度設計、材料選定、強度設計、信頼性設計について解説してきました。残るテーマは「要素設計」と「3D CAD」です。今回は、機械設計を行う上で欠かせない要素設計について解説します。
機械設計を始めたばかりの方は、「回転する軸をどのように支えるのか」「モーターの力をどのように伝えるのか」「部品同士をどのように固定するのか」といった場面で悩むことがあります。図面を描くことはできても、目的の機能を実現するために、どの機械要素を選べばよいのかが分からないのです。
例えば、モーターを購入しただけでは機械は動きません。モーターの回転を軸に伝え、その軸をベアリングで支持し、必要に応じて歯車やベルトで回転数やトルクを変換します。さらにボルトで固定して初めて、機械として機能します。私たちが普段目にする産業機械や工作機械、自動化設備は、このような機械要素の組み合わせによって成り立っています。
筆者の感覚では、装置を構成する部品のうち、図面を基に加工する部品が60%、型式を指定して購入する部品が40%程度を占めます。
要素設計とは、
などの機械要素について理解し、それらを適切に選定/設計する技術のことをいいます。
つまり要素設計とは、「機械を成立させるための部品の使い方を学ぶこと」といえるでしょう。
筆者の経験でも、初心者は「強度の高い材料を使えばよい」「大きな部品を使えば壊れない」と考えがちです。しかし、実際の機械設計はそう簡単ではありません。
例えば、回転する軸を支持する場合を考えてみましょう。軸受としてベアリングを使用する場合でも、
など、多くの種類から選定する必要があります。
工作機械の主軸のように高精度が要求される場合は、アンギュラ玉軸受が使われるケースが多いです。一方、搬送装置のローラーであれば、深溝玉軸受で十分な場合もあります。
同じベアリングであっても、
によって最適な選択は変わります。
つまり要素設計とは、単に部品を選ぶことではなく、「要求性能に対して最適な部品を選ぶこと」なのです。
| 軸受種類 | 特徴 | 得意な荷重 | 主な用途例 | 選定時のポイント |
|---|---|---|---|---|
| 深溝玉軸受 | 最も一般的なベアリング。構造がシンプルで低コスト。高速回転に適する。 | ラジアル荷重(径方向)/小〜中程度のスラスト荷重(軸方向) | モーター、ファン、コンベヤー、家電製品、一般産業機械 | 初心者が最初に覚えるべきベアリング。荷重が比較的小さく、高速回転する用途に適する。 |
| アンギュラ玉軸受 | 接触角を持ち、ラジアル荷重とスラスト荷重を同時に受けられる。高精度/高速回転に適する。 | ラジアル荷重/大きなスラスト荷重 | 工作機械主軸、ボールねじ支持部、高速回転機器 | 高精度な位置決めに適する。通常は対向配置や複列配置で使用する。 |
| 円すいころ軸受 | 円すい状のころを使用し、大きな荷重を支えられる。剛性が高い。 | 大きなラジアル荷重/大きなスラスト荷重 | 自動車ハブ、減速機、大型搬送装置、建設機械 | 重荷重に適する。予圧調整が必要な場合があり、組み立て精度が重要。 |
| ニードル軸受 | 細長いころを使用する。外径を小さくでき、省スペース設計に有利。 | 大きなラジアル荷重 | 自動車トランスミッション、ロボット関節部、小型減速機 | 設置スペースが限られる場合に有効。ただし、スラスト荷重には弱い。 |
| 表1 ベアリングの特徴(筆者解釈) | ||||
機械要素にはさまざまな種類があります。ここでは、代表的なものをいくつか紹介します。
「締結要素」とは、部品同士を固定するための機械要素です。代表的なものとして、次のような部品があります。
機械の多くはボルトによって組み立てられています。しかし、ボルトであれば何でもよいわけではありません。例えば、振動が発生する装置では、ボルトが緩む可能性があります。そのため、
などを使用して、緩みを防ぐことがあります。また、ボルト径や強度区分によって締結力も大きく変わります。たった1本のボルトでも、適切に選定しなければ機械の故障につながります。
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