要素設計とは何か 機械を成立させる部品の知識若手エンジニアのための機械設計入門(18)(1/3 ページ)

3D CADが使えるからといって、必ずしも正しい設計ができるとは限らない。正しく設計するには、機械要素に関するアナログ的な知識が不可欠だ。連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では、入門者が押さえておくべき基礎知識を解説する。第18回は、機械を成立させる部品の知識である「要素設計」について取り上げる。

» 2026年07月06日 07時00分 公開

 これまで本連載では、機械設計者が身に付けるべき「機械設計7つ道具」として、JIS製図、精度設計、材料選定、強度設計、信頼性設計について解説してきました。残るテーマは「要素設計」と「3D CAD」です。今回は、機械設計を行う上で欠かせない要素設計について解説します。

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機械は部品の組み合わせでできている

 機械設計を始めたばかりの方は、「回転する軸をどのように支えるのか」「モーターの力をどのように伝えるのか」「部品同士をどのように固定するのか」といった場面で悩むことがあります。図面を描くことはできても、目的の機能を実現するために、どの機械要素を選べばよいのかが分からないのです。

 例えば、モーターを購入しただけでは機械は動きません。モーターの回転を軸に伝え、その軸をベアリングで支持し、必要に応じて歯車やベルトで回転数やトルクを変換します。さらにボルトで固定して初めて、機械として機能します。私たちが普段目にする産業機械や工作機械、自動化設備は、このような機械要素の組み合わせによって成り立っています。

 筆者の感覚では、装置を構成する部品のうち、図面を基に加工する部品が60%、型式を指定して購入する部品が40%程度を占めます。

 要素設計とは、

  • ベアリング
  • 歯車
  • ボルト
  • ベルト
  • ボールねじ
  • リニアガイド

などの機械要素について理解し、それらを適切に選定/設計する技術のことをいいます。

 つまり要素設計とは、「機械を成立させるための部品の使い方を学ぶこと」といえるでしょう。

要素設計がなぜ重要なのか

 筆者の経験でも、初心者は「強度の高い材料を使えばよい」「大きな部品を使えば壊れない」と考えがちです。しかし、実際の機械設計はそう簡単ではありません。

 例えば、回転する軸を支持する場合を考えてみましょう。軸受としてベアリングを使用する場合でも、

  • 深溝玉軸受
  • アンギュラ玉軸受
  • 円すいころ軸受
  • ニードル軸受

など、多くの種類から選定する必要があります。

 工作機械の主軸のように高精度が要求される場合は、アンギュラ玉軸受が使われるケースが多いです。一方、搬送装置のローラーであれば、深溝玉軸受で十分な場合もあります。

 同じベアリングであっても、

  • 回転数
  • 荷重
  • 精度
  • 寿命
  • コスト

によって最適な選択は変わります。

 つまり要素設計とは、単に部品を選ぶことではなく、「要求性能に対して最適な部品を選ぶこと」なのです。

軸受種類 特徴 得意な荷重 主な用途例 選定時のポイント
深溝玉軸受 最も一般的なベアリング。構造がシンプルで低コスト。高速回転に適する。 ラジアル荷重(径方向)/小〜中程度のスラスト荷重(軸方向) モーター、ファン、コンベヤー、家電製品、一般産業機械 初心者が最初に覚えるべきベアリング。荷重が比較的小さく、高速回転する用途に適する。
アンギュラ玉軸受 接触角を持ち、ラジアル荷重とスラスト荷重を同時に受けられる。高精度/高速回転に適する。 ラジアル荷重/大きなスラスト荷重 工作機械主軸、ボールねじ支持部、高速回転機器 高精度な位置決めに適する。通常は対向配置や複列配置で使用する。
円すいころ軸受 円すい状のころを使用し、大きな荷重を支えられる。剛性が高い。 大きなラジアル荷重/大きなスラスト荷重 自動車ハブ、減速機、大型搬送装置、建設機械 重荷重に適する。予圧調整が必要な場合があり、組み立て精度が重要。
ニードル軸受 細長いころを使用する。外径を小さくでき、省スペース設計に有利。 大きなラジアル荷重 自動車トランスミッション、ロボット関節部、小型減速機 設置スペースが限られる場合に有効。ただし、スラスト荷重には弱い。
表1 ベアリングの特徴(筆者解釈)

機械要素の代表例

 機械要素にはさまざまな種類があります。ここでは、代表的なものをいくつか紹介します。

(1)締結要素

 「締結要素」とは、部品同士を固定するための機械要素です。代表的なものとして、次のような部品があります。

  • ボルト
  • ナット
  • ねじ
  • ピン
  • リベット

 機械の多くはボルトによって組み立てられています。しかし、ボルトであれば何でもよいわけではありません。例えば、振動が発生する装置では、ボルトが緩む可能性があります。そのため、

  • ばね座金
  • ナイロンナット
  • 緩み止め剤

などを使用して、緩みを防ぐことがあります。また、ボルト径や強度区分によって締結力も大きく変わります。たった1本のボルトでも、適切に選定しなければ機械の故障につながります。

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