MRPを「使える」状態にし、より活用していくためには、MRPのキホンを、段階を踏んで押さえる必要があります。運用ルールを整備し、発展させるステップを単純化して紹介します。以下に3つのステップのポイントを紹介します。
在庫データが正しく、棚卸差異が小さいことはMRP運用の絶対条件です。また、マスターデータも正確でなくてはいけません。まずは実績登録のプロセスを改善し、マスターデータの登録と承認の仕組みを整えることから始めましょう。
MRPを実行しただけで終わらせず、その後の手順を明確にルール化して実行します。この基本的なルール作りができていない、または実行できていないケースが散見されます。MRPを利用するには最低でも以下の点などは実行できる必要があります。
基本的なMRP活用ができるようになったら、さらに自動化を進めて活用度を高めていきます。例えば、安全在庫や発注ロットに加え、生産計画の変動を吸収するための「余裕日数」や「前倒し許容日数」のような高度な機能を、マスターを適切に設定して活用していきます。これらの機能を利用すると、生産計画が変動しても全体の在庫への影響を抑えつつ、少人数で効果的な運用が可能になります。
資材の特性や単価に応じて分類し、それぞれの分類に対して、どのように手配するか、またそのためにどれだけの在庫を持つかを決定し、適切な全体の在庫水準(金額)を設定します。その在庫計画に基づいて、分類に応じた適切な発注ロットや安全在庫(それぞれn日分など)を設定し、また納期の余裕日数や前倒し許容日数などのマスター値を定義し設定して運用ができるようになるとMRPによって自動的に在庫が調整されるようになり、適正な在庫水準(金額)を維持できます。
製造や発注の手配だけでなく、見積プロセスまで広げてMRPを活用して効率化することもできます。詳細な仕様が決まるまでマスターが登録できないと考えがちですが、新規資材についても新規資材用のダミーマスターデータを設定して、MRP機能を利用して見積依頼業務を効率化しているケースがあります。
通常はMRPを実行すると発注手配ができてそのままEDIで発注が行われるところ、新規資材についてはダミーマスターに基づきMRPによって購買担当ごとの見積手配ができます。それぞれの担当者がその結果を確認して、必要な見積依頼をし、発注情報を取りまとめます。その決定された発注情報をマスターに登録すると、翌日のMRPで発注手配ができ、そのままEDIで発注が行われる運用をしています。
「MRPが使えない」という課題の多くは、システムそのものの機能不足ではなく、部門間の権限の分断や、人手による調整を前提とした運用ルールに起因しているケースが多く見受けられます。せっかく導入した生産管理システムを宝の持ち腐れにしないために、「誰が数を決めるのか」「異常時にどう動くのか」という業務運用の見直しを進めて進化させていきましょう。
なお、最初の事例で取り上げたMRP利用率を大きく向上させた事例は、生産管理システムのリプレースを機に運用の見直しを行っています。運用ルールの見直し、特に部門間をまたぐ職務や権限の見直しや部門の統廃合は、平時にそれだけを行おうとすると現場の抵抗に遭遇するようなことが多くのケースで見られ、その実施に制約やきっかけを必要とすることがほとんどです。
システムリプレースでなくとも、別のプログラムやプロジェクトの中の一部としてその制約を利用したり、教育や事例共有などを通じてあらかじめ同じ意識や考えを共有できる仲間を増やしたりするなど、スムーズなDX推進の機会を積極的に作り出していきましょう。
ビジネスエンジニアリング
プロダクト事業本部 カスタマーDX推進部 部長
生産/販売/原価管理システム「mcframe」のユーザー会(mcframe Users Group: MCUG)の運営を事務局担当として20年間にわたり支えるとともに、現在は200社を超える製造業会員各社の課題解決とDX推進に尽力している。また、モノづくりとITのコンソーシアムやコミュニティーなどにも複数参画し、特にPLMやSCMに関する分科会では、積み重ねた知見を提供するとともに見識を広げ、設計製造連携や原価管理のセミナー講師も担当している。
ビジネスエンジニアリングでは、製造業の顧客向けに業務改革構想ならびにシステム化企画、ERPシステム導入のプロジェクトを数多く手掛け、その後「mcframe」の商品企画・開発ならびに導入にも従事している。
著書に「儲かるモノづくりのためのPLMと原価企画」(東洋経済新報社)。イベント講演「mcframeとユーザー会(MCUG)を通じてわかった『SCMシステム導入の真の価値と効果的な活用』」のモデレーターも務めた。
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