実際に生成AIを活用して3D CADデータを作成してみて感じたのは、「思ったより実用的だ」ということです。特にアイデア検討の段階では有効で、簡単な形状であれば、3Dモデルのたたき台を短時間で作成できます。
例えば、「取りあえず形状のイメージを作りたい」という場面では、大きな効果があります。ゼロからスケッチを描き始めるのではなく、まず生成AIで形状を作成し、それを基に修正していく流れが考えられます。
一方で、課題もあります。複雑な機械部品やアセンブリになると、一度の指示で期待通りの結果になることは、まだ少ない印象です。エラーが発生する、寸法が違う、拘束が不足する、設計意図が正しく伝わらないといったケースもあります。
また、生成AIだけで力学的な条件を考慮した3Dモデルを作成するのは難しいです。安全率を考慮したい場合には、ジェネレーティブデザインやCAEによるシミュレーションと組み合わせる必要があります。
現時点では、AIが設計者を置き換えるというより、AIが設計者を支援するという位置付けで捉えるのが適切だと感じます。従来なら数時間かかっていた作業が数分で終わるケースもあり、うまく使えば効果は大きいでしょう。
ここまでは生成AIと3D CADについて説明してきましたが、3D CGの場合についても少し紹介します。
3D CGで作成されるデータは、主にポリゴンメッシュです。これは、寸法や拘束、フィーチャ履歴などを扱うCADデータとは性格が異なります。3Dプリンタで使われることの多いSTLやOBJなどのファイル形式も、ポリゴンメッシュの代表例です。
今回は、アカウントを作成すればWebブラウザで無料から始められる「Tripo AI」を試してみました。先ほどと同じように、プロンプトとして次の内容を入力しました。
容量500mLサイズのペットボトルを作成してください。
生成されたモデルが画像4です。
色付きで、500mL風のラベルも付いており、見た目にはリアリティーがあります。
ただし、筆者が確認した範囲では、Tripo AI上で寸法を測定することはできませんでした。そこでSTLファイルとしてエクスポートし、Autodesk Fusionで読み込んで測定してみたところ、全長が1mmしかなく、500mLサイズにはなっていませんでした。少なくとも今回の試行では、実寸法までは考慮されていないようです。
そのため、設計用途でそのまま利用するのは難しそうです。一方で、デザインの雰囲気を確認したり、設計アイデアのヒントを得たりする用途には有効だと感じました。
今回はテキストから3Dモデルを作成しましたが、画像から3Dモデルを生成することもできます。また、キャラクターを生成して、アニメーションで走らせたり、踊らせたりすることも可能です。実際に試している様子をYouTube動画で公開していますので、興味のある方はご覧ください。
AI×3Dモデリングは、まだ始まったばかりの分野です。しかし、進化のスピードは非常に速く、少し前には難しかったことが、今では試せるようになってきています。
今後は、設計意図を理解したモデリング、解析結果を考慮した形状提案、製造性を踏まえた自動設計、コストや重量を最適化する設計支援なども進んでいくでしょう。将来的には、「こういう製品を作りたい」という要求から、3Dモデル、図面、部品表、加工データまでを一貫して生成するワークフローも現実味を帯びてくるかもしれません。
もちろん、最終的な判断や責任は人間が担う必要があります。設計者にとっては、どのような方向性で設計を進めるのかを決める力が、これまで以上に重要になります。そのためには、3D CADの操作スキルだけでなく、設計の基礎知識や経験、製造や解析に関する理解も欠かせません。
今回紹介した生成AI×3D CADは、まだ発展途上ではありますが、未来を感じさせる技術です。AIを活用することで、これまで3D CADに触れたことがない人でも、3Dデータ作成に挑戦しやすくなります。また、経験豊富な設計者にとっても、アイデア検討や初期モデル作成をスムーズに進める手段になり得ます。
AIが設計する時代はまだ先かもしれません。しかし、AIと一緒に設計する時代は、既に始まりつつあります。今後もさまざまなツールやサービスが登場してくるはずです。設計者として、その進化に注目しながら、うまく活用していきたいですね。
小原照記(おばら てるき)
いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事長も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動をしている。また企業の困り事に対し、デジタルツールを使って支援している。人は宝、財産であると考え、時代に対応する、即戦力になれる人財、また、時代を創るプロフェッショナルな人財の育成を目指している。優秀な人財がいるところには、仕事が集まり、人が集まって、より魅力ある街になっていくと考えて地方でもできること、地方だからできることを考えて日々活動している。
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