SIM-SHIPのRORO船初号機「しーかーご2」の操舵室が示す航海情報の集約と省人化イマドキのフナデジ!(15)(1/4 ページ)

「船」や「港湾施設」を主役として、それらに採用されているデジタル技術にも焦点を当てて展開する本連載。第15回は、「SIM-SHIPプロジェクト」におけるRORO船カテゴリーの1番船に当たる、「SIM-SHIP3 mk1」こと「しーかーご2」の操舵室について解説する。

» 2026年06月11日 08時00分 公開
[長浜和也MONOist]

 2026年4月22〜24日に東京ビッグサイトで開かれた国際海事展「Sea Japan 2026」は、東京港有明10号地その1多目的ふ頭(東京都江東区)にも実船展示会場を設けた。その会場で来場者を迎えたのが、和幸船舶の499GT型RORO船「しーかーご2」である。

 しーかーご2は、環境負荷の低減、船員不足への対応、運航コストの削減を同時に実現する船舶の開発を目指す「SIM-SHIPプロジェクト」において、RORO船カテゴリーの1番船に当たり、同プロジェクトでは「SIM-SHIP3 mk1」として紹介されている。建造所はふくおか渡辺造船所で、総トン数は495GT(グロストン)、全長は72.39m、航海速力は18.00kt(ノット)。主機関には、ダイハツインフィニアースの「6DCM-32e」を1基搭載する。

「Sea Japan 2026」の実船展示で公開された「しーかーご2」 「Sea Japan 2026」の実船展示で公開された「しーかーご2」。コックピット型集中操舵コンソールや各種デジタル機器を備える[クリックで拡大]

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RORO船の運航を支える操舵室の新しいレイアウトとは

 本連載「イマドキのフナデジ!」でも多くの船舶で取り上げてきたように、しーかーご2についても操舵(そうだ)室に注目したい。

 同船の操舵室には、航海用ディスプレイ、操船操作系、機関/バラスト関連の表示、監視カメラ映像が効率的に並ぶ。当直員は、航海中の見張りだけでなく、入出港や荷役準備に関わる情報も操舵室内で確認できる。本記事では、操舵室レイアウトから、SIM-SHIP3が航海関連情報をどのように扱う船なのかを紹介する。

 RORO船であるしーかーご2では、航海中の操船と入港後の荷役を一連の作業として考える必要がある。岸壁との位置関係、船尾ランプと岸壁の関係、車両甲板の状態、船体の姿勢は、荷役のしやすさと安全性に影響する。入港から着岸、ランプドア展開、車両の乗り降りまでを円滑に進めるには、操舵室側でも船尾まわりや甲板まわりの状況を把握することが重要だ。

 しーかーご2は、左舷着けに対応するランプドアを備える。また、荷役装置としては、ランプドア装置、可動甲板、ランプウインチなどを搭載する。しかし、省人化を進める船でこれらが船尾側の荷役作業で正常に稼働しているかを把握するためには、操舵室で監視カメラ映像や関連情報を確認することが必須となる。

 主機関警報や回転計も操舵室で確認できる。入港時や離着岸時には、主機関の応答や回転数、警報の有無を把握しながら操船するとともに、荷役作業においても機関状態の把握が求められるため、機関関連情報を操舵室で把握できることは、船舶の省人化を進める上で重要な要素といえる。

少人数当直を意識した“コックピット型”操舵室

 操舵室の各種操作卓と情報表示は“コの字”状のコンソール群に集約されている。

「しーかーご2」の操舵室を左舷から右舷方向に見る 「しーかーご2」の操舵室を左舷から右舷方向に見る。当直省人化のためにコンソールをコの字状に配置したのが特徴だ[クリックで拡大]

 前面窓に沿って航海用ディスプレイが並び、操船席の周囲には操作レバー、各種スイッチ、監視用モニターを配置する。従来タイプの操舵室では、レーダー、電子海図、機関関連表示、通信機器などの航海関連コンソールを前面に横一列で並べる例が多い。この場合、当直者は立ち位置を変えたり、コンソールの前を移動したりしながら各情報を確認する。しーかーご2は、操船席の周囲に表示/操作系を集約し、着席位置から複数の情報を確認しやすいコックピット型のレイアウトを採る。

 この配置は、少人数当直で扱う情報の多さと関係する。航海中には、レーダー、電子海図、自船位置、周囲の船舶、針路、速力を確認する。入出港時には、主機関の回転数や警報、船側や岸壁の状況、船尾ランプまわり、車両甲板の様子も確認したい。操船席の周辺に表示と操作系を集めることで、当直者は視線移動や船橋内の移動を抑えながら、複数の情報を見渡せる。

「しーかーご2」の操舵室 「しーかーご2」の操舵室。コの字型に配列したコンソールの内側に2脚のシートを置き、写真右側の右舷側シート周囲には航海情報モニター、操舵/推進操作系、通信機器を集約している。操船者は着座したまま、前方視界と各種表示を確認しながら船体制御や通信を行える[クリックで拡大]
左舷側シートから見た「しーかーご2」の操舵室 左舷側シートから見た「しーかーご2」の操舵室。周囲にはレーダー、航海情報、機関/船内監視関連の画面が並ぶ。シートはレールに沿って左右に移動でき、確認する画面や操作するスイッチの位置に応じて着座位置を変えられる。ただし船長によると、実際には「慣れている立ち位置でいることが結果的に多い」という[クリックで拡大]

 少人数当直を支える装備は、表示や操作系だけではない。操舵室天井には、古野電気のBNWAS(航海当直警報システム)用モーション検出器「BR-560」も設置していた。BR-560は、ブリッジ内の当直者の動きを検出し、BNWASのタイマーをリセットする装置だ。当直者の動きや操作を一定時間確認できない場合、BNWASは警報を出す。コックピット型レイアウトで情報を集める一方で、当直者の在橋確認や異常時の警報も、少人数当直を支える要素になっている。

操舵室天井に設置された「BR-560」 操舵室天井に設置された「BR-560」。ブリッジ内の当直者の動きを検出し、船橋航海当直警報装置に「当直者が活動中である」ことを伝える。一定時間反応がない場合は、BNWASが警報を段階的に発し、居眠りや体調急変、離席などによる当直不全を早期に知らせる。少人数当直では、当直者の在橋確認や異常時の警報発出も安全支援機能の一部を構成する[クリックで拡大]

 しーかーご2の操舵室では、前方を見ながら正面の航海用ディスプレイや操船操作系を確認できる。左舷ウイングにも操船コンソールを備え、離着岸時には船側や岸壁方向を見ながら操船関連の操作を行える。こうした配置は、RORO船で重要となる入出港、接岸、ランプドア展開、荷役準備の流れを支える。

 船体側では、船底中央に設けたバーキールと両舷のビルジキールにより動揺を抑え、ラダーポッド付きの高角度舵で操縦性能を高めている。操舵室側では、操船席まわりに航海、操船、機関、監視の情報を集める。船体の操縦性能と操舵室の情報配置を組み合わせ、入出港から航海、荷役準備までを少人数でも確認しやすい構成としている。

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