今回の技術の大きな特徴は、実験室の試験布のみならず、実際の市販製品に対しても高い有効性を示す点にあります。図4は、その応用例として色地の混紡繊維(ロングTシャツなど)に適用した結果を示しています。興味深いことに、先述の白い試験布が処理後にバラバラの綿状になったのに対し、これらの実製品を用いたケースでは、ポリエステル成分が抜けた後も一定の構造が維持され、布地状を維持したまま残る様子が観察されました。これは、生地の編み方が影響していると考えられ、実用化に向けた興味深い知見となりました。また、染料が異なっても混紡繊維が分別できたことは重要な成果です。
さらに、環境負荷の低減と経済性の担保に不可欠な溶媒の循環利用についても実証しました。ポリエステル分解後の反応液を回収し、減圧下に蒸留してエチレングリコールを回収しました。回収溶媒に不純物の混入がないことを確認し、再度分解実験に用いたところ、新品の溶媒を用いた場合と同等の性能が得られることが分かりました。これにより、溶媒を系内で使い続けるクローズドループの構築に確かなめどが立ちました。
今回の詳細なデータにより、マイクロ波プロセスが綿とポリエステルの強固な結合を迅速に解き、それぞれを高品質な資源へと転換させる強力なツールであることが明確になりました。これまでリサイクルが困難とされ、焼却処分されてきた廃棄衣料が、今回の技術によって再び価値ある素材へと生まれ変わる道筋が示されました。高い回収精度と溶媒の循環利用という2つの柱がそろうことで、繊維産業のサーキュラーエコノミー化に向けた理論的な基盤は整いつつあります。
大阪大学 大学院工学研究科 応用化学専攻 教授 宇山 浩(うやま ひろし)
大阪大学 大学院工学研究科にて、高分子化学を基盤とした持続可能な材料設計と資源循環技術の開発を推進している。主に高性能バイオプラスチックの開発に関する研究に従事しており、分子レベルでの構造制御を通じて、環境負荷を低減する新たな材料設計原理の構築を進めている。
他方で、マイクロ波を用いた混紡繊維の選択的分解技術に加え、廃棄プラスチック製品の再生技術など、物理的分別が困難な素材や廃材を有効な資源へと戻す社会実装研究にも幅広く取り組んでいる。持続可能な資源循環社会の形成に寄与することを目指し、国内外の企業との連携も積極的に展開している。
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