キヤノンITSが2030年を見据えた新ビジョンを発表した。AI活用を事業活動のドライバーとし、製造業のスマートSCMやモビリティDXを強力に支援。売上高は1.4倍を目指す。
キヤノンITソリューションズは2026年4月16日、2030年を見据えた新たな経営ビジョン「共想共創カンパニー2030」を発表した。新ビジョンでは、製造業向けにサプライチェーンのトータルソリューションを提供する「スマートSCM」や、自動車関連向けに受託開発を拡大する「モビリティDX」など7つを重点領域として位置付けた。同年3月23日にキヤノンITソリューションズ 代表取締役社長に就任した須山寛氏は、「既存のシステム構築モデルの延長線にとどまらず、AI(人工知能)活用を中心に新しいビジネスモデルの創出に挑戦する」と方針を示した。
キヤノンITソリューションズは、2020年策定の「VISION2025」の下、経営基盤の強化と事業規模の拡大を推進してきた。コロナ禍に伴う一時的な落ち込みはあったものの、2025年12月期の実績は売上高1471億円(2020年比で年平均成長率11.1%)、営業利益は同2.1倍の158億円となり、営業利益率は同2ポイント改善した。
須山氏は「売上高が1500億円規模に迫る中、事業規模の拡大と収益性の改善を同時に実現できたことは、当社の大きな成長の証だ」と振り返る。一方で、須山氏は「既存事業の延長線だけでは次の飛躍には不十分」と、今後の成長に向けた課題意識も示した。そこで、新ビジョン「共想共創カンパニー2030」では、急速に普及するAIを事業活動のドライバーと位置付けた。従来の業務効率化支援にとどまらず、社会課題の解決や顧客のビジネスイノベーションそのものを主導する企業へと変革を遂げる方針だ。
新ビジョンに基づく経営目標として、2030年の全社売上高を2025年比で1.4倍以上となる約2100億円規模に拡大させる計画を打ち出した。キヤノンマーケティングジャパングループ全体では、ITソリューション事業の2030年売上高目標を5000億円と掲げており、同社はその約4割をけん引する中核的役割を担うことになる。須山氏は、「現状のシステム構築モデルのままでも直近数年は数字を伸ばせる。しかし、今回の目標値はエンジニアの増員や市場の伸びに依存するものではなく、新しいビジネスモデルの構築に向けた挑戦を含んだ野心的な数字である」と強調した。
「共想共創カンパニー2030」では、事業成長をリードする中核として、新たに7つの重点事業領域を設定した。具体的には、スマートSCM(サプライチェーンマネジメント)、モビリティDX(デジタルトランスフォーメーション)、金融コアIT、文教ICT、バックオフィスDX、クラウドセキュリティ、ITプラットフォームサービスの7領域である。現時点でこれら領域の全社売上高比率は約2〜3割だが、2030年に向けては50%以上へと引き上げ、重点領域全体でCAGR(年平均成長率)8.4%以上の成長を目指す方針だ。中でも、製造業のDXを支える領域に注力していく構えだ。
製造業向けの具体的な取り組みとして注力するのが「スマートSCM」である。スマートSCMでは、製造現場における生産から配送までを一貫して支援するトータルソリューションの提供を推進する。コンサルティング領域を拡大するとともに、サプライチェーン全体の可視化強化や精度の高い需給予測、即日配送への対応など、製造業が直面する高度な課題解決に踏み込む。
また、「モビリティDX」の拡大も進める。自動車業界では現在、SDV(Software Defined Vehicle)への進化が進んでいる。こうした潮流を捉え、自動車OEMや部品サプライヤー、建機/重機メーカーなどを対象に、SDVや次世代ECU(電子制御ユニット)の領域での技術貢献を図るほか、車載システム全体の受託開発を拡大していく方針だ。
この他にも、事業基盤をサイバー攻撃から守る「クラウドセキュリティ」や、金融機関のシステム高度化を支援する「金融コアIT」、教育DXを推進する「文教ICT」、業務の自動化を進める「バックオフィスDX」、モダナイゼーションを含めた「ITプラットフォームサービス」の計7つの領域を軸に、多角的なビジネスイノベーションを推進していく。
これら7つの重点領域をはじめとする今後の事業展開を強力に支えるのが、AI活用基盤の構築である。キヤノンITソリューションズは2027年末までに、適用可能な全ての開発案件においてAI駆動開発を全社標準として適用することを目指す。須山氏は急速に進むAIの社会実装について「特定の領域にとどまるものではなく、あらゆる事業活動を進めるためのドライバーになり得る」と語る。同社が長年培ってきた各産業の業務ノウハウや設計書、ソースコードなどを知的資産としてAIが活用しやすい形に構造化し、ビジネスイノベーションの基盤としていく構えだ。
須山氏は「単に求められてシステムを作るのではなく、社会や顧客の環境変化を捉え、自らを変化させることに挑戦していく」と語り、次なる成長へ伴走する姿勢を見せた。
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