「来るべき8がけ社会の切り札に」、MODEとキヤノンMJ、セーフィーが提携製造業IoT

MODEとキヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)、セーフィーが業務提携を開始する。MODEのIoTプラットフォーム「BizStack」やAIアシスタント「BizStack Assistant」と、キヤノンMJ、セーフィーが手掛ける映像撮影や画像データの技術を融合し、さまざまな作業現場向けにより効率的な現場管理ソリューションの提供を目指す。

» 2025年02月13日 06時15分 公開
[朴尚洙MONOist]

 MODEとキヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)、セーフィーの3社は2025年2月12日、東京都内で会見を開き、業務提携を開始すると発表した。MODEのIoT(モノのインターネット)プラットフォーム「BizStack」やAI(人工知能)アシスタント「BizStack Assistant」と、キヤノンMJ、セーフィーが手掛ける映像撮影や画像データの技術を融合し、建設や販売、倉庫、工場などの作業現場向けにより効率的な現場管理ソリューションの提供を目指す。数カ月以内にBizStack AssistantでキヤノンMJとセーフィーのソリューションと連携したサービスの提供を開始し、2025年末までに3社の技術を融合したより高度なサービスの開発を目指すとしている。

会見の登壇者 会見の登壇者。左から、セーフィーの森本数馬氏、MODEの上田学氏、キヤノンMJの寺久保朝昭氏[クリックで拡大]

 今回の業務提携に併せて、キヤノンMJとセーフィーはMODEへの出資を行っている。MODEが総額8億円の資金調達を行ったシリーズB追加ラウンドには、キヤノンMJとセーフィー傘下のセーフィーベンチャーズ、KDDI傘下のKDDI Open Innovation Fund、キリンホールディングス傘下のKIRIN HEALTH INNOVATION FUNDが参加している。

 MODEは、2022年にIoTプラットフォームのBizstackを立ち上げ、2023年にはBizstackで収集したセンサーデータを基に生成AIの技術をいち早く取り入れることで現場への的確なサポートを行えるAIアシスタントのBizStack Assistantを投入した。MODE CEO/Co-Founderの上田学氏は「2024年にBizStack Assistantを展開していく中で、センサーデータと映像データの相互補完が重要になってくることが見えてきた。生成AIもさらなる進化を遂げ、マルチモーダルサポートによりテキストだけでなく映像や音声のデータを入力として扱えるようになっている。映像データで極めて高い技術を持つキヤノンMJ、セーフィーとの業務提携により、さまざまな現場に映像データを解釈する生成AIの技術を展開できるようになる」と語る。

映像データを解釈する生成AIによるAIアシスタントのイメージ 映像データを解釈する生成AIによるAIアシスタントのイメージ[クリックで拡大] 出所:MODE

 上田氏によれば、映像データを解釈する生成AIの技術を取り入れた現場向けのAIアシスタントはまだ世界にないという。MODEの本社は米国にあるが、今回の3社連携によるAIアシスタントはまずは日本市場から展開を始めることになる。「これから日本国内のさまざまな現場で人手不足が加速度的に進んで行き、2040年に生産労働人口が現在の8割まで減少する『8がけ社会』が到来する。3社で開発する現場向けAIアシスタントは、この8がけ社会の切り札になり得る」(上田氏)という。

「8がけ社会」が到来する日本の生産労働人口は2040年に現在の8割まで減る「8がけ社会」が到来する[クリックで拡大] 出所:MODE

 今回の3社連携の枠組みでは、AIアシスタントのBizstackに生成AIの映像解析技術を適用して現場の異常を即座に検知できるようにする。従来は、アラートを出してから映像を確認するというフローだったところを簡略化できる。また、キヤノンMJとセーフィーのカメラをMODEのIoTプラットフォームであるBizstackと連携し、映像データとセンサーデータをリアルタイムで統合し、さまざまな現場の包括的な管理を行うことを目指す。さらに、BizStack Assistantが映像データやセンサーデータの分析結果を直感的に提示するとともに、ユーザーがこの分析結果にスマートフォンやチャットアプリを通じて簡単にアクセスすることで、現場の状況把握と迅速な対応に役立てられるようにする。

3社連携の枠組み 3社連携の枠組み[クリックで拡大] 出所:MODE

 その上で、これら3社連携の成果を全て盛り込んだ次世代ソリューションの開発に向けて、2027年末までに6000台のカメラとの接続を目指し、あらゆる現場データをリアルタイムで解析可能な環境を実現するとしている。

 セーフィー 取締役 開発本部本部長 兼 CTOの森本数馬氏は「セーフィーは国内のクラウドカメラのシェアで54.1%とトップに位置している。カメラで撮影する映像データの価値は極めて高いが、全てが映像データだけで解決できるわけではない。センサーデータとの相互補完や生成AIの活用によるサービスの幅の大きな広がりを含めて、MODEとの提携には大きな意味がある。短期、そして中長期の両軸で協業を進めていきたい」と説明する。

 なお、セーフィーは20205年末〜2026年初をめどに映像データを活用するためのAIソリューションプラットフォームの構築を進めている。MODEとの提携では、Bizstack Assistantなどの生成AI技術とこのAIソリューションプラットフォームを連携していくことも視野に入れている。

 今回の3社連携の中で、顧客開拓という観点で大きな役割を期待されているのがキヤノンMJだ。同社 マーケティング統括部門 ソリューションデベロップメントセンター長の寺久保朝昭氏は「カメラを使って見る/撮るという顧客は増加しており、これからはクラウドに収集した映像データを活用するフェーズに入っていく。3社連携によって提供できる価値を、社会インフラ、建設/建築、ファシリティー/ビル管理、流通小売、製造/工場といったさまざまな市場に展開していきたい。その上で顧客からのニーズをフィードバックして、新たな技術開発に反映していくことにも取り組む」と述べている。

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