電子文書の真正性確保へ、キヤノンMJとサイバートラストがeシール自動付与で連携製造ITニュース

キヤノンマーケティングジャパンとサイバートラストは、電子文書の安全性および信頼性を強化することを目的に、電子文書の真正性や改ざんされていないことを担保するトラスト分野での協業を開始。両社のソリューションを連携させて、eシールの付与とドキュメント管理をシームレスに実現する。

» 2025年12月19日 08時30分 公開
[八木沢篤MONOist]

 キヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ)とサイバートラストは2025年12月16日、企業間で取り扱う電子文書の安全性および信頼性を強化することを目的に、電子文書の真正性や改ざんされていないことを担保するトラスト分野での協業を開始すると発表した。

 協業の取り組みとして、2026年1月下旬から、キヤノンMJのデジタルドキュメントサービス「DigitalWork Accelerator 電子取引管理サービス」(以下、DWA)と、サイバートラストの「iTrust リモート署名サービス」および「iTrust eシール用証明書」を連携させ、DWAで管理するPDF形式の電子文書に、eシールを自動で付与する機能の提供を開始する。

 同機能は、製造業における品質保証書、検査結果報告書、加工証明書などメーカーが発行する文書をはじめ、教育、金融、保健医療、食品、流通、行政といった多様な業種で使用される業務文書を対象としている。

「DigitalWork Accelerator」eシール付与機能の概要 「DigitalWork Accelerator」eシール付与機能の概要[クリックで拡大] 出所:キヤノンMJ/サイバートラスト

電子文書の真正性確保に向けたeシール活用が本格化

 近年、企業間でやりとりされる帳票や文書の電子化が急速に進む一方で、発行元のなりすましや内容の改ざんといったリスクも顕在化している。このため、電子文書の改ざんを防ぎ、真正性を保証する仕組みの重要性が高まっている。こうした背景から、電子文書の発行元と内容が改ざんされていないことを証明するデジタル署名技術の1つとして、社印や組織印の電子版に相当するeシールへの関心が高まっており、政府主導で「eシール認定制度」の整備も進められている。国内では、PDF形式で作成された請求書や領収書、品質保証書、資格証明書の他、教育機関が発行する成績証明書や卒業証明書などにeシールを付与する取り組みが広がりつつある。

 こうした背景を踏まえ、両社は今回の協業を通じて新機能の提供を開始する。これにより、企業間取引や業務で作成されるPDF形式の電子文書について、発行元の証明と改ざんの有無を検知することが可能となる。

iTrustサービスについて

 サイバートラストは、電子署名用認証局およびリモート署名サービスに関し、日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)の審査基準に適合した「JIPDEC トラステッド・サービス登録」を取得している。厳格な運用体制の下、iTrust リモート署名サービスとiTrust eシール用証明書を提供し、電子文書の信頼性と真正性を確保している。

 iTrust リモート署名サービスは、電子証明書をセキュアに保管し、長期署名に対応した電子署名、タイムスタンプ、eシール付与などの機能をAPI経由で提供するクラウドサービスである。APIを通じて導入企業のシステムと認証局を連携させることで、サーバサイドで電子署名やタイムスタンプ、eシールを付与できる。製造業での導入例としては、大阪製鐵が発行する鋼材検査証明書(ミルシート)への採用があり、発行元の証明および真正性の確保を実現。あわせて、ペーパーレス化や業務効率化、保管/確認コストの削減、検索性の向上といった効果も得られているという。

DigitalWork Acceleratorについて

 キヤノンMJのDWAは、紙文書と電子文書をクラウド上で一元管理し、高い検索性と長期保存に特化したデジタルドキュメントサービスである。キヤノングループの強みである複合機との連携により、紙文書の電子化からクラウド保存までを一貫して実施できる他、社内の各種業務システムとバッチやAPIで連携可能だ。DWAに取り込まれた文書は、取引先名や契約番号、担当者などのインデックス項目をキーに管理されるため、属人的なフォルダ管理やデータのサイロ化を防ぎ、業務文書を効率的に活用できる。

協業により実現する機能と特長

 今回の協業により、DWAに電子文書をアップロード/保管するだけで、自動的にeシールが付与されるようになる。既存の出力/保管オペレーションを変更する必要がなく、受領側もPDFを開くだけで、署名後の改ざん有無や発行主体を確認できる。また、社内で稼働する基幹システムや業務システムの帳票出力フローにDWAのAPIを組み込むことで、eシールの付与とドキュメント管理をシームレスに実現可能となる。

 eシール付与に必要な署名鍵の保護や署名の実行は、全てクラウド側で安全に処理される。そのため、ユーザー側での鍵管理は不要であり、DWAにアップロードされたPDFから生成したハッシュ値のみを用いて電子署名が行われる。これにより、PDFファイルそのものが社外に送信されることはない。

 両社は今後も連携を強化し、業種や業務に応じて発生する多様な書類へのeシール付与を通じて、業務効率化と信頼性向上に貢献し、トラスト分野における新たなビジネスモデルの確立を目指すとしている。

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