日産自動車が経営再建計画「Re:Nissan」の先を見据えた長期ビジョンを発表。AIDV(AIデファインドビークル)を中核とするなど、日産として新たな道筋を明確化することで、Re:Nissanの発表から販売の落ち込みが続いた日本市場の刷新感を与えるとともに、一足先に回復軌道に乗った北米/中国市場における成長基盤の構築を進めたい考えだ。
日産自動車は2026年4月14日、2026年度が最終年となる経営再建計画「Re:Nissan」の先を見据えた長期ビジョンを発表した。「モビリティの知能化で、毎日を新たな体験に」を掲げ、AIDV(AI[人工知能]デファインドビークル)を中核とするなど、日産として新たな道筋を明確化することで、Re:Nissanの発表から販売の落ち込みが続いた日本市場の刷新感を与えるとともに、一足先に回復軌道に乗った北米/中国市場における成長基盤の構築を進めたい考えだ。
日産自動車のイヴァン・エスピノーサ氏。写真内左側にあるのが欧州向けコアモデルの「ジュークEV」、同右側にあるのがグローバル向けのコアモデル新型「エクストレイル/ローグ e-POWER」だ[クリックで拡大] 出所:日産自動車日産自動車 社長兼CEOのイヴァン・エスピノーサ氏は「本日は日産にとって大きな節目になる日だ。『Nissan Ambition 2030』を進化させ、より明確でよりシャープに、顧客の日常に寄り添うビジョンを打ち出す」と語る。Nissan Ambition 2030は、急激に業績が悪化した2024年度後半からさかのぼること3年前の2021年11月に発表した長期ビジョンである。2030年度までにEV(電気自動車)15車種を含めた電動車23車種を導入するなどの内容になっていた。
自動車業界を取り巻く環境が大きく変化する中で、顧客が求めているのは「実用的で、手の届きやすい、日々の暮らしに寄り添うモビリティ」だという。エスピノーサ氏は「そのためには、最先端のテクノロジーをより安全に、より直感的に、より多くの人へ届ける必要がある」と強調する。しかし、そのための取り組みを阻む大きな壁となっていたのが、2024年度下期に陥った業績悪化によって露呈した日産自動車の構造的課題だった。「商品ポートフォリオが需要に追い付かず、コスト上昇のスピードを販売台数増加でカバーできず、規模が縮小する中で固定費と業務の煩雑性は高止まりしていた」(同氏)。
これらの問題を解決すべく2025年5月に発表した経営再建計画がRe:Nissanである。固定費と変動費で合計5000億円のコスト削減、2万人の人員削減、工場数を17拠点から10拠点に削減などの施策を骨子に、2026年度までに自動車事業の営業利益およびフリーキャッシュフローの黒字化を目指すという内容になっている。
エスピノーサ氏は「Re:Nissanが折り返し地点にきた今こそ、長期ビジョンを志だけにとどめず、行動を導く指針として明確にすべきだと考えた。このビジョンは、どの領域でパートナーと組むか、そこで立ち止まるべきかを判断するための指針になる。本当に重要なものに投資を集中させ、プレッシャーの中でも判断がぶれないようにする」と説明する。
長期ビジョンの戦略はAIを核とした「知能化」と「電動化」から成る次世代技術を中心に、「商品ポートフォリオ」「事業モデル」「市場」「パートナーシップ」の5つに分けられる。
日産自動車の技術イノベーションの中核にあるのがAIDVによる「知能化」である。AIDVは、AIドライブ技術とAIパートナー技術を組み合わせることで、移動そのものを進化させ、移動の時間をより価値の高い体験へと変えていくとしている。
同社はこれまで「プロパイロット」や「プロパイロット2.0」などの市場導入により、ADAS(先進運転支援システム)技術を段階的に進化させてきた実績がある。AIDVにおけるAIドライブ技術は、従来のルールベースのアルゴリズムに基づくADASではなく、生成AI技術を取り入れたE2E(エンドツーエンド)方式の自動運転技術を実現する次世代プロパイロットとして市場投入される。
次世代プロパイロットは2026年夏発売予定の「エルグランド」の商品ライフサイクルの一環として2027年度末までに導入する計画である。また長期的には、次世代プロパイロットに代表されるAIドライブ技術を搭載するモデルをラインアップの9割まで拡大することを目指す。
一方、AIパートナー技術は、移動中の行動を支え、クルマを暮らしの中に自然に溶け込ませることで顧客の体験価値を高めるものとして定義しており、スマートフォンやクラウドと連携することで日常の暮らしと自然につながっていくという。AIドライブ技術とAIパートナー技術を融合したAIDVにより「最終的には出発から到着まで全ての顧客に寄り添いサポートし続ける自動運転の実現を目指す」(日産自動車 CTO 赤石永一氏)としている。
「電動化」については、日産自動車独自のHEV(ハイブリッド車)システムである「e-POWER」が重要な役割を果たす。2030年度までに15車種のEV投入をうたうなど、EVが戦略の中核となっていたNissan Ambition 2030とは異なり、各国市場の状況に合わせてe-POWERを中心に幅広い電動パワートレインを展開する方針だ。
まず、e-POWER以外に、より高い走破性や長距離走行への安心感を求める顧客向けにフレーム車用のHEVシステムを開発する。また、PHEV(プラグインハイブリッド車)やREEV(レンジエクステンダー車)については、パートナーとの連携を通じて、顧客の要望に合わせて市場投入を図る。EVについては、バッテリーコストの削減に向けた努力を続けながら、全固体電池をはじめとする次世代バッテリー技術の開発を継続するという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
モビリティの記事ランキング
コーナーリンク