μmの極小部品が巨大産業を左右? 医療や自動車の未来を担う「精密機械」の世界ディープな「機械ビジネス」の世界(8)(2/2 ページ)

» 2026年04月07日 06時00分 公開
[那須直美MONOist]
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デジタルが、経験の浅い作業者の力強い味方に

 現在、多くの国が高齢化という課題に直面しています。中でも日本は世界でも類を見ないスピードで高齢化が進む一方、長寿大国としての側面も併せ持っています。

 この現実は、重みがあると同時に、日本が優位に立つものがあることも示しています。それは、高齢化社会にどう向き合い、いかに乗り越えていくのかという答えを世界に先駆けて示す「先行モデル」としての役割です。日本の挑戦と取り組みは、やがて各国にとっての指針になり、模範的な役割を担っていくに違いありません。

 地球儀を見ると分かるように、日本は米国や中国のような広大な土地を有してはいません。だからこそグローバル競争力で存在感を高めるには、「強みの領域を見極め、さらに強化していく」ことと、「量より質」を高める戦略が鍵を握るのではないかと感じています。

 かつては機械づくりにおいて職人技といった「暗黙知」が大きな価値を持ち、重宝されていましたが、今や、その領域にも変化が起きています。デジタル技術によって技能の見える化が進み、分野によっては経験の浅い作業者であっても熟練者に迫る品質を実現できるようになりました。

 これは単なる効率化ではなく、人手不足という制約を乗り越え、新たな価値創出へとつなげる大きな転換です。限られた資源、限られた人材の中で、いかにして時代のニーズに応える新たな価値を生み出すか。その問いに真っ正面から向き合い続けることは、日本が国際競争力を高めるための最大の武器になるはずです。

 社会インフラを整え、私たちの生活を豊かにするために、機械や機器をつくる、扱うといった点で高度なデジタル化が進むことは、健常者だけでなく、高齢者や身体の不自由な方も含めた多くの人たちが社会参画できる可能性を大きく広げていきます。

 もともと日本はきめ細かなサービスに強みを持つ国です。その強みはデジタル技術と結び付くことで、新たな次元へと進化し始めています。かつては対面でなければ成立しなかったサービスの一部が、リモートであっても遜色ない水準で提供できるようになってきました。リモートは通信環境にも左右されますが、これは近い将来、世界的に大きく改善されていくと見込まれます。

 既にその兆しは現れており、例えばオンライン診療では、一定の制約はあるものの、自宅にいながら医師の診察や薬の処方を受けることが可能になりました。また、機械や設備の予防保全においても、遠隔からの診断や監視が現実のものとなっています。こうした分野において、日本企業は持ち前のきめ細かさとデジタル活用を掛け合わせることで、大きな強みを発揮できるのではないでしょうか。

 「人に寄り添うサービス」と「最先端のデジタル技術」。その融合で、誰もが取り残されることなく社会とつながり続けられる仕組みを実装していくこと。これこそが日本が世界に示すべき未来のカタチであり、次の時代を切り開く力になると強く感じています(次回へ続く)。

著者略歴

那須直美(なす・なおみ)

インダストリー・ジャパン 代表

工業系専門新聞社の取締役編集長を経てインダストリー・ジャパンを設立。機械工業専門ニュースサイト「製造現場ドットコム」を運営している。長年、「泥臭いところに真実がある」をモットーに数多くの国内外企業や製造現場に足を運び、鋭意取材を重ねる一方、一般情報誌や企業コンテンツにもコラムを連載・提供している。

産業ジャーナリスト兼ライター、カメラマンの二刀流で、業界を取り巻く環境や企業の革新、技術の息吹をリアルに文章と写真で伝える産業ドキュメンタリーの表現者。機械振興会館記者クラブ理事。著書に「機械ビジネス」(クロスメディア・パブリッシング)がある。


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