大変革期を迎える「輸送機械」の世界〜EVから空飛ぶクルマまで〜ディープな「機械ビジネス」の世界(5)(1/2 ページ)

本連載では、産業ジャーナリストの那須直美氏が、工作機械からロボット、建機、宇宙開発までディープな機械ビジネスの世界とその可能性を紹介する。今回は、自動車や飛行機といった「輸送機械」について触れる。

» 2026年01月19日 07時00分 公開
[那須直美MONOist]

 今回は、自動車や飛行機といった「輸送機械」について触れたいと思います。

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 製造業に携わる方々であればご承知の通り、世界の自動車産業は現在、大きな転換点に立たされています。そのきっかけの1つに、2015年に合意された「パリ協定」があります。パリ協定とは、2020年以降の長期的な気候変動問題に関する国際的な枠組みのことで、日本も2020年10月に「2050年までにカーボンニュートラルを目指す」と宣言しています。

「動力」「生産工程」の技術革新がもたらすもの

 こうした時流を背景に、自動車産業は電動化へ向けた動きが加速しています。ただ、この変化は短期間で収束するものではなく、落ち着きどころが見えない状況が続いているのが実情です。

 理由としては、EV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)など、CO2排出ゼロの自動車開発が急加速している一方で、燃費や電費の継続的な改善に加えてHV(ハイブリッド車)やPHV(プラグインハイブリッド車)などのエネルギー効率が高い自動車を導入することで、全体としての燃料消費量を削減していく動きも起きていることが挙げられます。これらが同時並行で競争していることが、さらに着地点を分からなくさせています。

 100年以上続いているクルマの歴史を振り返っても、これだけ多くの技術が同時に競い合うのは例を見ない状況です。最近になって排ガス規制の緩和が見られる国があるものの、各国は「環境規制対応」のため、研究開発に並々ならぬ開発意欲を燃やしています。

 これに関連して、「生産工程における脱炭素化」の必要性も問われています。近年の製造トレンドとして、EVやFCVなどの生産について、画期的な生産技術の導入も見られるようになりました。注目したい点は、部品点数の削減や車体の剛性向上のために、構造部品を鋳造で一度に成形する「ギガキャスト」と呼ばれる技術が登場したことです。

 従来のクルマは複数の部品を溶接したり、部品と部品をボルトで締め付けたりして固定をしていましたが、ギガキャストではサブフレームなどの大型部品を一度に成形するため、工程短縮とコストの削減が一気に実現できます。また、モーターケース、ナックル、バッテリーケース、インバーターケースなどもアルミ一体化部品なので、クルマの軽量化につながります。

 従来のガソリンエンジン車の部品点数は約10万点といわれていますが、一方のEV車の部品点数は1万点ほどと、ガソリン車と比べるとかなり少なくなっています。ただ、それで製作が楽になるという単純なものではありません。

 EVは、ざっくり言うと「電気を流してモーターを回す仕組み」です。「ガソリンを燃やすための仕組み」を支える複雑な部品は不要になり、先ほど触れたギガキャスト技術の登場で、ガソリン車で多用されていた「個別の部品を組み合わせる」といった面倒な工程もかなり削減されました。ただ、その分、剛性を高めた新素材などの開発も進むと予測されます。そのため、次世代自動車のニーズに合致した部品開発にも、積極的な研究開発や設備投資が必要になってくるのです。

 今では従来の開発スピードよりももっとスピーディーに世の中は変わってきており、必要とされる部品の開発も先回りして予測する必要が出てきてきました。製造業を取り巻く環境が大きく変わる局面では、生き残りをかけて、次の成長を見据えた設備投資が重要な鍵を握ります。

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