リコージャパンは、VRを活用した空間共有ソリューション「RICOH Virtual Workplace」の説明会兼体験会を開催。東京都建設局の石神井川護岸整備事業において、設計業務を受託したドーコンが同ソリューションを採用した事例を紹介した。
リコージャパンは2026年3月19日、VR(仮想現実)を活用した空間共有ソリューション「RICOH Virtual Workplace」の説明会兼体験会を開催した。
同ソリューションは、3Dデータや点群データなどを基に、建物の完成イメージや土木工事現場などをVR空間上に再現し、関係者が同一空間を共有しながら設計検討などが行える点を特長とする。
同社は、場所に縛られない新たな働き方を実現するワークプレイスソリューションの一環として、同ソリューションを位置付けている。従来の図面や現地確認に依存していた設計検討に対して、VRを活用することで、空間情報を直感的に共有し、関係者間の認識のズレを低減することを狙う。
また、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)に加え、PCやWebブラウザからもアクセス可能で、遠隔地の関係者が同時に参加しながら検討できる。実際のスケール感や距離感を体感しながら意思決定を行えることから、図面や画面だけでは伝わりにくい空間認識のズレの解消につながる。
RICOH Virtual Workplaceのメインターゲットである建設業界が直面する課題として、労働人口の減少と現場の複雑化が挙げられる。若年入職者の減少や高齢化により熟練技能の継承が難しくなっている他、設計/現場管理の双方で1人当たりの負荷が増大しているという。
また、BIM/CIMなどの導入は進んでいるものの、活用が局所的にとどまっていることや、部門横断でのデータ活用が進んでいない点(ICT活用の遅れ)も課題となっている。
特に問題視されているのが、設計段階での検討不足に起因する手戻りだ。意匠/構造/設備の干渉や納まりの不備が施工段階で発覚し、後工程での変更対応がコスト増大や工期遅延の要因となる。手戻りによるコスト損失は全体の10〜15%に達するというデータもある。
リコージャパン デジタルサービス企画本部 ワークプレイスエクスペリエンス事業センター フィールドソリューション企画室 フィールドソリューション企画グループの前鼻毅氏は、「設計プロセスでの検討を高度化し、後工程での手戻りを防止することが重要だ」と述べる。
同社は、建設プロセスの中でも基本設計および一部の詳細設計における設計検討に着目。VRを活用してフロントローディングを実現し、関係者間の合意形成を迅速化することで、後工程での手戻りを防止する考えだ。
RICOH Virtual Workplaceは、複数人が同時にVR空間に入り込み、設計検討を行うマルチプレイ型の仕組みを採用する。BIM/CIMデータや点群データに加え、図面や資料、360度画像、動画など多様な情報を空間内で共有しながら検討を進めることができる。
さらに、レーザーポインタやツアー機能による視点共有、音声入力によるテキスト化、資料の空間内表示など、コミュニケーションを支援する機能も充実している。直感的に操作できるUI(ユーザーインタフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)や、酔い対策なども実装しており、複数人での検討作業を円滑に行えるよう設計されている。
これらの機能により、単なる3Dビュワーにとどまらず、複数の関係者が同一空間内でリアルタイムに議論を行えるコラボレーション基盤として機能する。設計者、施工者、発注者といった立場の異なる関係者が同時に参加し、視点や意図を共有しながら意思決定を進めることが可能だ。
前鼻氏は「関係者が同じ空間イメージを共有しながら検討できる点が大きな特長であり、直感的な合意形成につながる」と説明する。
これにより、干渉や納まりの不整合を早期に発見し、使い勝手や動線をバーチャル空間で体感しながら確認できる。「作ってから直す」から「作る前に直す」へのプロセス転換を図り、設計品質の向上と手戻り削減につなげる。
RICOH Virtual Workplaceの強みについて、前鼻氏は「コミュニケーション機能が豊富である点が挙げられる。実際にゼネコンの設計部門で採用された際には、このコミュニケーション機能、特に資料などを共有できる点が評価され、採用に至った」と語る。
なお、RICOH Virtual Workplaceの導入に当たっては、基本的に標準機能での提供となるが、必要に応じて個別のカスタマイズにも対応可能だという。
リコージャパンは、RICOH Virtual Workplaceが設計検討にとどまらず、施工検討や施工管理などにも活用が広がっていることも紹介した。
例えば、鹿島建設では建築設計の高度化に向けて導入されている他、竹中土木のトンネル工事では360度のライブ映像を活用した遠隔での施工状況確認に活用されている。また、東急建設による東京メトロ銀座線渋谷駅のプロジェクトでは、線路切り替え工事におけるVR活用の実証などが行われたという。
今回の説明会では、同日発表された東京都建設局が進める石神井川護岸整備事業におけるRICOH Virtual Workplaceの活用事例も紹介された。同事業では、河川管理用道路の設計業務をドーコンが受託し、RICOH Virtual Workplaceを採用した。
同事業では、周辺環境への影響について関係者間で情報共有を行うことが課題となっていた。従来は図面確認や現地調査によって検証していたが、空間的なイメージの共有には限界があった。
今回、VRを活用することで、発注者と受注者がVR空間内の現地を歩きながら検証を行うことが可能となった。護岸と橋の接続部の高さの差異や、沿道と住居入り口との高さの差異といった細部の取り合いについても、VR空間内に改善イメージを書き込みながら議論を重ねることで、臨場感のある検証を実現した。
前鼻氏は「図面だけでは伝わりにくい部分についても、空間を共有しながら検討することで、確実な情報共有と合意形成が可能になる」と説明する。
こうした取り組みにより、従来は把握しにくかった空間的な課題を設計段階で可視化できるようになり、手戻りの削減や合意形成の迅速化につながるとしている。
製造業など他分野での活用可能性について、前鼻氏は「現状、案件数はまだ多くないため、まずは建設分野を中心にRICOH Virtual Workplaceの展開を進めていき、徐々に他分野へもユースケースを広げていきたい」と述べる。
また、RICOH Virtual Workplaceの今後の技術展開として、より高精細な空間再現に向けた取り組みも進めていく。具体的には、ドーコンの事業において、3DGS(3D Gaussian Splatting)などの描画技術を活用し、従来の3Dモデルや点群データに加えて、実写に近い空間表現をVR上で扱えるようにし、設計検討の高度化を目指すという。
また、リコージャパンは、建築分野ではゼネコンの設計部門や設計事務所、土木分野では建設コンサルに対してRICOH Virtual Workplaceの導入を図るとともに、設計検討をより円滑にするための機能追加、サービス運用の負荷低減、顧客業務を効率化するためのAI活用などにも取り組むとしている。
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