LWFAでプラズマの制御が難しいという課題に対して、今回の研究グループは、レーザーパルスの波面乱れを抑制し、プラズマ源となる超音速ガスジェット標的の安定性を高めた。その内部構造を精密に制御する技術も開発し、LWFAの電子ビームの品質と安定性をXUV領域でのFEL発振を可能とするレベルまで向上させることに成功した。
具体的には、「レーザーパルスの整形による集光精度の向上」「内部整流構造を備えた超音速ガスノズルの新規開発」「急峻(きゅうしゅん)な階段状密度分布を形成する技術の開発」といった取り組みを行った。
「レーザーパルスの整形による集光精度の向上」では、レーザーパルスの周縁部を空間フィルターで除去し、平面度の高い中心部分のみを用いることで集光精度を向上。これによりプラズマ生成が安定化し、結果として発生する電子ビーム発生点の揺らぎが大幅に低減し、電子ビームの安定性とともに単色性も向上した。
「内部整流構造を備えた超音速ガスノズルの新規開発」では、ガス流を均質化する内部整流構造を設計するとともに、この構造を搭載したガスノズルを開発し、従来よりも安定性/再現性の高い超音速ガスジェット標的を実現。「急峻な階段状密度分布を形成する技術の開発」では、衝撃波を用いてガス標的内部に急峻な階段形状の密度構造を安定に形成する手法を新たに開発し、FEL発振に必要となる単色性の高い電子ビームの生成に成功した。
同グループは、大型放射光施設「SPring-8」(兵庫県佐用町)のレーザー加速プラットフォームで、これらの改良によって得られた高い品質/安定性のLWFA電子ビームの実験を行った。同実験では、KEKの山本氏が開発した「磁力相殺型アンジュレータ」にこのLWFA電子ビームを通過させることで、27n〜50nmのXUV領域において放射光の強度が自発光に対して、最大約20倍に増幅されること(FEL発振)を確かめた。このLWFA電子ビームでは、加速長3mmで300メガエレクトロンボルト(MeV)という高いエネルギーを達成した。
細貝氏は「LWFAの電子ビームでFEL発振に成功したということは、この電子ビームが最先端のレーザー加速器で発生した電子ビーム同等のクオリティーに達したというベンチマークになる」と強調した。
なお、通常アンジュレータでは、永久磁石を用いて強力な周期磁場を発生し、この磁場と電子ビームの相互作用によって放射光を生成する。この実験で使用した磁力相殺型アンジュレータは、磁石間の強い磁場吸引力を相殺する反発磁石を付加することでアンジュレータの小型化/軽量化を実現し、FEL発生部の小型化に成功した。
今回の成果は、大型高エネルギー加速器施設に限られていた「短波長FEL」システムの卓上サイズ化の可能性を提示するとともに、小型XFELシステムの実現に向けた最初のステップになった。
細貝氏は「これまでは『プラズマは不安定で制御不能だ』と考えられていたが、今回の成果で、不安定性は解決可能なエンジニアリングの問題(熱、振動、設計など)であることが分かった。今後は(小型のXFEL/短波長FELシステムの)『基礎研究』から『実証/装置開発』の段階に入る」と展望を明かした。
今回の取り組みは、大阪大学産業科学研究所、大阪大学レーザー科学研究所、QST 関西光量子科学研究所/量子医科学研究所、KEK、奈良女子大学、理化学研究所 放射光科学研究センター、自然科学研究機構 分子科学研究所、電波通信大学などが2017年にスタートした「レーザー加速プロジェクト」の一環として行われた。同プロジェクトの対象期間は2017〜2027年で、「電子加速」「イオン加速」「レーザー開発」をテーマに研究開発を進めている。
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