車載ネットワーク関連以外もいくつか紹介しよう。
GaN(窒化ガリウム)デバイスの国産化や実用化を進めているのが「All GaN ビークルプロジェクト」だ。環境省の「革新的な省CO2実現のための部材や素材の社会実装・普及展開加速化事業」の一環であり、大阪大学、東海国立大学機構名古屋大学、パナソニック ホールディングス(パナソニックHD)、豊田合成、デンソーなどが参画している。
GaNデバイスは、現在はサファイア基板上またはシリコン基板上に形成する方法が主流だが、より高い性能を求めてGaN基板上にGaN素子を形成するいわゆる「GaN on GaN」の実現に向けた研究開発がさまざまな企業や研究機関で進められている。
大阪大学、パナソニックHD、豊田合成および三菱ケミカルは、GaN on GaNに必要なGaNの種結晶およびGaNウエハー製造の成果を展示した(図9、10)。
図9 サファイア基板上に種結晶(ポイントシード)を付けてGaNウエハーを成長させるNaフラックス法の流れ(上側)。大阪大学とデンソーが開発を進めていて、6インチサイズまでは見通しを得ている[クリックで拡大] 出所:All GaN ビークルプロジェクト
図10 Naフラックス法によって製造したGaNウエハー(写真の中央の円形のもの)。ポイントシードによって直径90mmのウエハーを作り、研磨などの仕上げによって64mmのウエハーを作成した例[クリックで拡大]最初にサファイア基板の上にMOCVD(有機金属気相成長法)によってGaNの種(シード)を置き、Na(ナトリウム)フラックス法を用いてシードを成長/結合させ、最後にサファイアとGaNの熱膨張の違いを利用して剥離させ、研磨してGaN基板を作る方法である。展示では直径64mmウエハーを見せていたが、6インチ(150mm)サイズまではめどが付いていて、今後はSiC(シリコンカーバイド)並みの低コスト化を目指していくという。
EV用インバータについては、出力50kWの2レベルインバータ(図11)および2レベルに比べて波形を正弦波に近づけられる出力100kWの3レベルインバータのプロトタイプを展示していた。後者は近日中に市販EVに搭載して走行試験を行う予定との説明であった。
図11 出力50kWの2レベルインバータ。GaN on GaNで製造した縦型GaN素子を用いたトラクションインバータである。インバータ左側にある4枚の小型PCB上に、4個の縦型GaN素子で構成したGaNモジュールが6個ずつ搭載されている[クリックで拡大]最後に茨城県ブースに出展した筑波大発ベンチャー2社の新しいセンサーテクノロジーを紹介する。
筑波大学で助教授を務めていた青砥隆仁氏が創業したOptech Innovationは、特殊加工を施したF値の小さい明るいレンズで撮影した画像に、ニューラルネットワークなどの処理を適用してパンフォーカス画像を得る「Neural Focus」のプロトタイプを展示した(図12)。
図12 Optech Innovationの「Neural Focus」。アクリルボックス内に置かれているのが特殊加工を施したレンズとカメラの試作機である。右側にあるタブレット端末の画面上側にあるようにぼやけた撮影画像を再構成して、タブレット端末の画面中央のような手前から奥までフォーカスの合った画像を生成する。F値の小さい明るいレンズを使ってパンフォーカス映像が得られる[クリックで拡大]一般に、明るいレンズで撮影すると被写界深度が浅くなる一方で、被写界深度の深い画像を得ようとすれば絞りを絞らなければならず十分な光量が必要になる。
Neural Focusは手前から奥までフォーカスの合ったいわゆるパンフォーカス画像を波面制御とAI(人工知能)復元の組み合わせによって再構成する技術である。F1.4といった明るいレンズが使えるため、20ルクス程度の暗い条件でも撮影できるという。
現在はプロトタイプの段階で具体的なアプリケーションは決まっていないそうだが、マシンビジョンの他、人物認識などに提案していきたいと、同社代表の青砥隆仁氏は説明した。
なお、同社では、物体に振動を与えたときの微小な動きを光学的に検知して物体の柔らかさ(粘弾性)を非接触かつ非破壊で計測する「モノのやわらかさを可視化するカメラ」の開発も進めている。
一方、FabSenseは筑波大の学生だった皆川達也氏が創業したスタートアップである。磁性体を混ぜたスポンジを感圧素子として使って触覚センサーや圧力センサーを実現する社名と同じ「FabSense」を展示した(図13)。スポンジの形状は任意であり、また、センシング部分とは電気的には接続されていないため自由度が高い。液中や塵埃(じんあい)の多いところでも使用でき、交換も簡単にできる。
把持を行うロボットのハンドや、自動車分野では着座センサーなどに提案していく考えだ。
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