商用バンタイプの軽EVが出そろうとはいえ、国内における軽自動車販売の大半は乗用車である。EVの普及率を高めていくには、サクラやN-ONE e:のような乗用の軽EVの拡充が欠かせない。
そして、2026年の軽EVにおける最大の話題は、EV市場における世界最大手となったBYDが日本市場向けに開発した「RACCO(ラッコ)」の発売だろう。JMS 2025で初公開されたRACCOは、サクラやN-ONE e:とは異なり、軽乗用車で最大の売れ線車種である後席パワースライドドア付きで全高が1800mm前後のスーパーハイトワゴンとなっている。暦年で11年連続新車販売台数1位を獲得したホンダの「N-BOX」の例を挙げるまでもなく、近年の軽自動車市場のトップランナーはスーパーハイトワゴンが占めているにもかかわらず、サクラもN-ONE e:もパワースライドドアを持たない全高1500〜1700mmのハイワゴンとして開発された。
乗用の軽EVの本格的な浸透に欠かせないスーパーハイトワゴンを最初に投入するのが、中国向け以外の地域に向けて初めて専用車を開発するBYDになったのは、軽自動車メーカー各社の車両開発スケジュールの隙間にはまり込んだようにも思えるが、同社の車両開発スピードの速さによるところも大きいかもしれない。日本法人のBYD Auto Japanは年間受注台数を順調に伸ばしており、2026年はRACCOの投入効果により2025年の4000台を大きく上回り1万台の大台に乗せる可能性もある。
なお、2026年1月開催の「東京オートサロン2026」では、RACCOの仕様として、Standardモデルのバッテリー容量が約20kWhで満充電からの走行距離は200km超、Long Rangeモデルが同約30kWh/300km超になることが示された。今後は、現行車種であるサクラやN-ONE e:に対してどのような価格設定をしてくるか次第で、その衝撃度は大きく変わってくるだろう。
RACCOの2026年夏からは遅れるものの、スズキも2026年度内に乗用の軽EVの市場投入を予定している。JMS 2025ではそのコンセプトカーである「Vision e-Sky」を披露した。外形寸法は全長3395×全幅1475×全高1625mmなので、サクラやN-ONE e:と同じハイトワゴンとなる。満充電からの走行距離も約270kmとしており、これもN-ONE e:と同等となっている。先んじて発売されるBYDのRACCOと比肩できるような価格設定も必要になってきそうだ。
そして2027年は、発売から5年目を迎えるサクラの新モデル投入が想定されるタイミングになる。RACCOの売れ行きによっては、各社からスーパーハイトワゴンの軽EVの開発が急ピッチで進む可能性もある。そして軽EVによって国内のEV普及率が高まれば、自然と国内自動車市場全体でのEV比率も高まっていくことになるだろう。
この他にも、ダイハツ工業がJMS 2025で公開した次世代軽自動車のコンセプトカー「K-VISION」は独自開発の軽自動車用シリーズ式ハイブリッドシステムを搭載しており、この要素技術は軽EVにも横展開が可能だという。K-VISIONの量産車発売から続く形で、EV版K-VISIONの登場も期待できそうだ。
このように、日本の独自規格である軽自動車がEV普及の起爆剤として期待されているが、EUでもEVの普及に向けて新たな小型EVの規格「M1E」が2025年12月に発表された。これまで、日本における超小型モビリティと同等の車格となる「クアドリシクル(quadricycle)」が規格化されていたが、M1Eは全長4.2m以下と定められており、より実用的に利用できるA〜BセグメントのEVが対象になるとみられる。
M1Eは、EU域内で生産/販売する場合に、通常のEVの1.3台分に当たる排出クレジット「スーパークレジット」が付与されることが自動車メーカーにとってのメリットになる。M1E3台で通常のEV4台分の排出クレジットが得られる上に、より購入しやすい価格に設定する小型EVであることから販売台数も増やしやすく、スーパークレジットによる効果をさらに得やすくなる。
今後日本の軽EV市場が活況を呈していけば、全長4.2m以下であることからEU市場のM1E規格にも合致する軽EVを欧州市場に展開することも可能だろう。また、インド市場でトップシェアを握るスズキが、同市場でのさらなるEV普及に向けて日本の軽EVを横展開して行く可能性もあり得るかもしれない。
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