今回の検証では、運転に必要なタスク「認知」「判断」「操作」の3つについて、ナノイー技術がどのような影響を与えるのかを確認した。これらのタスクに対して「運転タスクの評価」「事故が起きやすい状況の設定」「結果を分析できる専門的な知見」3つの要件を定義し、これらの要件について豊富な知見を持つIITBと連携して共同研究を進めた。
検証環境には実際の車両内空間を再現した運転シミュレーターを採用した。これは道路の混雑状況や歩行者の有無などを自由に設定でき、被験者を同一の条件で評価できるからである。カーエアコンの吹き出し口からナノイーを放出し、被験者が自然に吸入できる環境下で運転中の生体反応を測定した。測定には脳波センサーとアイトラッキングセンサーを使用し、脳波や視点の変化や注視回数/時間を計測して運転操作中のデータを取得した。
今回の検証では、インド在住の20〜45歳までの男女20人を対象に日常的に起こり得る危険な場面を想定した5つのコースを用意し、ナノイー技術あり/なしの状態で人体への影響を確認した。
交差点での右折侵入を想定したコースでは、信号機のない交差点で右側から車間距離の異なる複数の車両が走行する状況でドライバーがタイミングよく右折できるかを評価した。その結果、ナノイー技術のある条件の方が速度を下げたり緩やかなハンドル操作をしたりといった運転を行っており、よりスムーズな右折侵入ができる可能性があると判明した。脳波計測でもナノイー技術がある条件ではα波が有意に減少し、集中力の向上を示す変化が確認できた。
歩行者飛び出しのコースの検証では、ドライバーが道路沿いにいる歩行者を認識し飛び出してくる状況において適切に対応できるのかを評価した。結果的にナノイー技術がある条件下では注視回数が減少の傾向を示し、平均注視時間が長くなることを確認した。パナソニック くらしアプライアンス社 くらしプロダクトイノベーション本部 コアテクノロジー開発センター 機能デバイス開発部 主任技師の岡田俊宏氏は「これは、飛び出してくる可能性のある歩行者をしっかり意識でき、注意力が向上したことを示唆している」と語る。
パナソニックは今回の検証を全て終えた結果、集中力/注意力の向上や運転操作において良好な変化を示すことを確認した。岡田氏は「インド工科大学の先生方からも『ナノイー技術は運転中の集中やパフォーマンス向上を支援する可能性がある』と期待されている。今後は作用メカニズムの解明や実写を用いた検証を進めていく」と述べている。
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