ロボットによる吸着把持の原理と仕組みいまさら聞けない 真空吸着搬送(前編)(4/4 ページ)

» 2025年12月19日 07時00分 公開
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真空吸着システムの自動化に向けた制御

 これらの制御を自動化するために、真空スイッチおよびマイコン制御回路をシステムに取り込みます。

 真空スイッチは、空圧配管内の圧力を計測しつつ、あらかじめ設定した複数のスレッショルドとの比較結果を出力する要素です。この真空スイッチのスレッショルドを「ワークピースを確実に吸着搬送できる、必要十分な真空圧帯域」の上下限に設定し、前述の吸着制御バルブとマイコン制御で連携させることで、帯域上限を抜けたら吸着制御バルブをOFF(すなわち真空生成を中止する)、下限を下回ったらON(すなわち真空生成を再開する)といった制御ができます。

 ワークピースとの間の気密の度合いが高ければ高いほど、工場エアーの消費を抑えることができるようになります。このような仕組みをエアーセービング(省エア)制御と呼びます。

 マイコン制御回路を搭載することで、上位制御機器(PLCやロボットコントローラー)と接続でき、ワーク吸着指令信号やワークリリース指令信号の入電に応じてバルブ制御やエアーセービングのシーケンスを実行できるようにすることで、自動化がかないます。

 真空発生器であるエジェクタの真空生成を発停させながら、「ワークピースを確実に吸着搬送できる必要十分な真空圧帯域で」システムの真空圧を維持する制御を行うことで、把持の確実性と省エアを両立しています。無論、このような機器構成以外にも別種の機器で省エアを実現することは技術的には可能ですが、コストなどの理由から上述のような制御手法がスタンダードになっています。

 現在では、真空生成エジェクタとその制御に必要なソレノイドバルブ/真空スイッチなどが一体となったエジェクタデバイスが市場で入手できます。圧縮エアーと制御線をつなぎ込むことで、簡単に吸着制御ができるようになっています。

ソレノイドバルブ等を一体にしたエジェクタデバイスの活用例:圧縮エアーと制御線を接続することで、ロボット手先で真空吸着のコントロールが可能になる ソレノイドバルブなどを一体にしたエジェクタデバイスの活用例:圧縮エアーと制御線を接続することで、ロボット手先で真空吸着のコントロールが可能になる[クリックで拡大]出所:シュマルツ

 次回は、真空吸着システムに対する状態監視について解説します。

著者紹介

小川尚希(おがわ なおき)

シュマルツ株式会社 ビジネスディベロップメント

工学修士(感性工学)。信州大学大学院にて介護用装着型アシスト装置や高分子人工筋肉をテーマにメカトロ系・人間工学系領域を専攻。これまでオカムラ(旧岡村製作所)、ルネサスエレクトロニクス他経て、2024年から現職。社のスローガン「重力負荷から人々を解放する」に共鳴しながら、FA/省力用機器の国内マーケティング活動やPSF活動を行っている。

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