最も基本的な構成要素として、把持部、真空源、圧力計器、弁、それらを空圧的に結合する配管が必要です。ここでは一般工業の分野で広く用いられている、樹脂製吸着パッド、真空発生器、ソレノイドバルブや真空スイッチなどについて概説します。
吸着パッドは、真空吸着システムの最終端にあり、ワークに直接グリップするための、手のような役割をする要素です。吸着カップと呼ぶこともあります。
基本的には、ラバー素材でできたお椀形状の構造体であり、用途に合わせてさまざまな材料/形状で製作されています。
真空パッドとワークとの間の空間の圧力が、周囲圧力よりも低くなる状態を作り出すと、周囲圧力によって真空パッドが外側からつぶれ、ワークに押し付けられ固定されます。この状態になると、真空パッドがワークをグリップし持ち運ぶことができるようになります。真空状態を必要なタイミングだけ作り出すことで、ワークを自在に操れるのです。この時に必要な圧力差は、真空発生器を使って真空パッドの内側の空気を吸引することで実現します。
ワークへ真空パッドが接した時に、真空発生器を使って真空パッドとワークの間にある空気を素早く排出します。真空パッドがワーク表面に隙間なく接している場合、外気がワーク接触面を通じてパッド内に流入することはほとんどなく、パッド内が真空状態になります。真空パッドの保持力は、周囲圧力と真空パッド内の圧力の差に比例して大きくなります。
実際にエンドエフェクターに使用する吸着パッドの種類や数は、ワークの重量や、速さや加速度、姿勢などの搬送プロセス条件に左右されます。パッドは専用の取付金具を介しエンドエフェクターへ緊結されます。
真空発生器は真空吸着システムにおける重要な構成要素で、電動式と空気圧式があります。電動式は電力を利用し真空を発生させることができる、真空ポンプや真空ブロワなどを指します。空気圧式は、コンプレッサーなどで生成した圧縮エアーを真空生成に転用する仕組みを持つエジェクタなどを指します。
真空ポンプにはさまざまな方式がありますが、ここではベーン式ポンプの駆動原理について紹介します。
円筒型のハウジングの中に、板状のベーン(A)と、ベーンが収まる溝を備えたロータが偏心した状態で格納されています。このロータを電気モーターで回転させると、ベーン(A)は遠心力によってロータから張り出しハウジング内壁へ押し付けられ、その結果ベーン(A)とハウジング内壁との間に密閉された気室(B)が作られます。
ロータが回転することで連続的に圧力変化と空気流動が起きるため、外気を入り口(C)から引き込み、出口(D)から排出するようなポンプ機構が形成されます。真空ポンプは圧縮比が高いため、非常に高い真空圧を発生させることが可能です。
真空ブロワもモーターを使って羽根車を回すことで吸い込みを実現します。円周上に気室が並んだインペラ(A)をハウジングの中で回転させることで、吸込み側(B)では外気をハウジング内にかき込む負圧が発生し、排出口(C)から排気されます。吸着搬送では、ブロワの吸込み側(B)を真空源として用います。真空ブロワは、非常に大きな吸込量を実現します。しかし一方で、発生する真空圧は比較的低い圧力です。
真空エジェクタは工場エアー(圧縮エアー)を駆動源とし、ベンチュリの原理に基づいて真空を発生させます。下図真空エジェクタの断面図をご覧ください。
接続ポート(A)から投入された圧縮エアーは、ベンチュリノズル(B)を通過します。圧縮エアーはこの過程で加速され、圧縮されますが、ノズル(B)を通過すると同時に膨張し、負圧(真空)が発生します。
これにより、真空接続ポート(D)にはエアーの引き込みの流れが発生し負圧となります。これを吸着把持のための真空源として用います。なお、引き込まれたエアーは、投入された圧縮エアーと混気し、ノズルの先に伸びるディフューザー管内を移動し、サイレンサ(C)を通じて排出されます。
標準的な圧力の工場エアーを投入した時、最も高い真空圧を生成できるようエジェクタは設計製造されており、その最大到達真空圧はー800mbarないしはそれ以上となります。
真空エジェクタは仕組みの単純さや扱いやすさから、長く生産現場で用いられている真空発生器です。以降は、エジェクタを真空源とした回路構成で説明します。
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