米国、中国から見た貿易相手国「日本」 存在感は著しく低下小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(40)(3/3 ページ)

» 2025年10月21日 07時00分 公開
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中国の相手国別輸出入

 それでは、躍進する中国は、どのような相手国とどのような貿易をしているのでしょうか。最後に、中国の相手国別輸出入シェアを見てみましょう。図3が中国の相手国別輸出(図3-1)と輸入(図3-2)の変化です。

photo 図3-1 中国の相手国別輸出額[クリックで拡大] 出所:OECD Data Explorerを基に筆者が作成
photo 図3-2 中国の相手国別輸入額[クリックで拡大] 出所:OECD Data Explorerを基に筆者が作成

 中国の貿易は、輸出も輸入も30年の間に20倍以上に拡大しています。日本では2〜3倍、米国も4〜5倍程度でしたので、すさまじい拡大スピードだといえます。

 中国の場合は、米国とは反対に、輸入よりも輸出の方が大きく超過している状況です。一時期は“世界の工場”とも言われていましたが、輸出額では米国を上回り世界第1位となっています。

 相手国別シェアの変化を見ると、輸出では日本が18%を占めていて香港に次ぐ水準だったのが、2023年には5%程度とかなり減少しています。金額では大きく拡大しているのですが、他国との貿易額が大幅に増えているために、シェアとしては低下しているという状況です。

 特に米国向けの輸出は215億ドル(約3.2兆円)から、5012億ドル(約75.6兆円)へと20倍以上に拡大しています。シェアも15%を維持しており、最大相手国となっています。韓国への輸出も大きく拡大しており、2023年には1490億ドル(約22.3兆円)と日本に匹敵する水準となっています。

 輸入でも米国は台湾に次ぐ規模となっていて、両国の貿易面での結び付きが強いことが分かります。

 日本は、1994年は23%を占める最大相手国だったのが、2023年には6%となっており、台湾、米国、韓国を下回り、オーストラリアやロシアともそれほど変わらない水準となっています。

 中国の場合は輸出も輸入も取引相手国が分散していて、大きく依存する国がないことが特徴的です。トップ10のシェアも50%程度となっており、日本や米国とは大きく異なっています。

 中国にとっての日本は、輸出でも輸入でもまだ上位に入っていますが、1990年代からするとその存在感はかなり低下しているといえるでしょう。

貿易と国際情勢の変化

 日本は貿易の規模は拡大していますが、他国の拡大規模と比べると非常に緩やかな伸びであることが見えてきました。その分だけ、他国にとっての日本の存在感が相対的に低下していることも確認できました。

 日本は人口や経済規模の割に貿易が少ない国だという特徴があります。プラザ合意をきっかけとした急激な円高を受けて、輸出が不利となり、その代わりに現地生産化(対外直接投資)を進めてきたことも影響しています。

 ただ、2022年以降円安が進んだことや、関税についての混乱、アジア諸国の成長など、貿易に関する外部環境は大きく変化しています。また、日本は既に所得水準では先進国の中でも低く、国際的な物価水準もかなり低下しています。以前のように日本で作ると割高になるというわけでもなくなってきました。そうなると、また以前のように輸出を伸ばすという手も選択肢として浮上してきます。

 また、日本経済全体の在り方を考えると、今回の統計の対象に入れていないサービスの輸出入なども考慮する必要があります。旅行(インバウンド)や、GAFAMなどに代表される通信情報サービスの重要性も増してきているためです。今後日本の経済がどのような形を指向していくのか、貿易の観点からも引き続きチェックしていく必要があります。

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筆者紹介

小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役

 慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。

 医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業などを展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。


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