日本のモノづくりの現状を示す「2025年版ものづくり白書」が2025年5月30日に公開された。本連載では「2025年版ものづくり白書」の内容からDXや競争力などについてのポイントを抜粋して紹介している。第3回では、経済安全保障を踏まえた持続的成長への考え方について取り上げる。
経済産業省、厚生労働省、文部科学省は2025年5月30日に「2025年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)」を公開した。
本連載の第1回と第2回では、主にDX(デジタルトランスフォーメーション)の現状と取り組むべき方向性について紹介したが、第3回となる今回は、経済安全保障を踏まえたサプライチェーン変革などへの取り組み状況について解説した第4章第3節から、「令和6年度製造基盤技術実態等調査(我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査)報告書」(アクセンチュア)の調査結果を中心に紹介する。
製造業に対するさまざまな要求が高まる中で、経済安全保障への対応、脱炭素を含む環境適合、DXの推進は、今後の成長に向けた大きなカギを握る領域だが、その取り組み状況はどうなっているのだろうか。2025年版ものづくり白書で紹介された「令和6年度製造基盤技術実態等調査報告書」によると、環境適合およびDXへの取り組みについては、約6割の事業者が「行っている、又は検討を開始した」一方で、経済安全保障に関しては、約6割の事業者が「行っていない」という結果となった。
では、経済安全保障への取り組みとして実際にどのようなことを行っているのだろうか。最も多かったのが「情報管理体制やサイバーセキュリティの強化」(65.0%)で、「部素材調達先の変更や多元化」(57.7%)が続いた。その他では「直接の取引先、最終的な需要先、提携先の精査」(38.5%)、「自社の持つ重要技術や秘匿すべき技術の特定と管理強化」(38.0%)などの回答も多かった。
経済安全保障への取り組みを開始した時期については「2020年以降〜現在」とした回答が半数を超えており、米中貿易摩擦や各地での地政学的問題などから、直近で意識の急速に高まってきたことがうかがえる。
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