外観検査機器やロボットを導入した場合、どの程度なら経営者は費用対効果があったと判断するのか。ロボット導入により、今まで以上の利便性や期待以上の効能が得られ、作業効率や生産性が向上するための費用対効果の基準とは、何なのか。
ここで、「3」という数字が出てくる。
バリュー(効果/効能)とコスト(価格)を比較した場合、価格に納得感(リーズナブル)があり、しかも当初思っていた(期待値)以上の付加価値があると判断されれば、ロボット導入は高く評価される。
その期待値は、当初より30%増しというのが評価基準と見ていいだろう。
実際、ロボットメーカーの新製品のプレスリリースには、従来の性能に比べ、3割向上や、30%削減という数字が記述されることが多い。
10%では人の負担軽減にとどまり、20%で費用対効果やコスト削減が見込まれ、30%あれば自動化やロボット導入は成功したと判断していいと思う。生産性が30%向上した、人員を3割削減できたとなれば、経営者も費用に見合った効果/効能があったと思うだろう。
外観検査機器やロボットを導入する場合には、この30%という数値をまず目標に取り組むことが重要だ。
例え10%、良くて20%というのが現状だとしても、30%という数値を目標にする。なぜなら、AIやそれに伴うロボットシステムは今後ますます進展する。今できないことも半年後にはできるようになるかもしれない。今は10%の生産性向上の効果しかないとしても、技術の劇的な進展により、30%、あるいは50%以上の効果、効能が期待できる日が来るだろう。
生産現場でロボットができない作業はまだまだ数多いが、米中を中心にヒューマノイド(人型ロボット)の開発、実証実験、一部工場への導入が進められている。今後、安価なヒューマノイドが製造現場に大量に導入された場合、劇的な生産性の向上が一気に進むかもしれない。
そのためにも、今からできるところに、できる範囲で、自動化機器やロボットの導入を進め、劇的な効果、効能が期待される時代に備えておく必要があるだろう。
次回(第3回)は、自動化機器/ロボットシステムを導入する前に行っておくべき事柄について記述する。
小林賢一
株式会社ロボットメディア 代表取締役
NPO法人ロボティック普及促進センター 理事長
2005年から20年間にわたりインフラ・プラント点検、建築施工、製造工場、介護・高齢者見守り、生活支援などの分野でロボット関連技術の調査、開発支援、実証実験、利活用、セカンドオピニオンに携わり、現在、ロボットビジネスに関するさまざまな相談に応対している。
ロボットビジネスのプレイヤーとして新たな活躍を目指すための講座(日本ロボットビジネス体系講座)や、与えられた「解」ではなく、自ら「解」を導き出し、収益につながるビジネスモデルをコーチングするワークショップ(ロボットビジネス・マインドリセット)を主宰。書籍「ロボットビジネスの全貌シリーズ」の監修、発行も行った。利害関係のない中立で公正な「ロボット・セカンドオピニオンサービス」や、異なる領域・用途にも利用可能な両用技術で既存事業と極限環境双方から収益確保を目指す研究会「ハイブリッドデュアルユース/ダブルインカム」などを実施。
ロボット産業創出推進懇談会 座長(2016〜2021年)
ロボット保険サービス 代表(2012〜2021年)
かわさき・神奈川ロボットビジネス協議会 事務局長(2011〜2015年)
ロボット実証実験実行委員会 委員長(2011〜2014年)
介護・医療分野ロボット普及推進委員会委員(2010〜2012年)など
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