今回の試作機におけるリチウムイオン電池の検知手順は以下の通りだ。まず対象のごみをコンベヤーベルトに乗せて、X線照射装置の対象範囲であるトンネルを通過させる。次にX線照射装置で得られたX線画像を基に、Raptor VISION BATTERYが色や形状、模様などからリチウムイオン電池を画像認識して検出する。
この検出データに基づき、可視光カメラでトンネルを通る対象ごみを撮影し映像をモニターに投影するとともに、モニター上でリチウムイオン電池を赤枠で囲み位置を見える化する。これらの情報により、作業員はリチウムイオン電池を除去できる。
小山氏は、「前回と今回の実証実験で利用した試作機の大きな違いは搭載しているX線照射装置の数だ。前回の試作機はX線照射装置を1台しか備えておらず、対象物の垂直画像しか得られなかった。今回の試作機は、X線照射装置が2台取り付けられており、垂直画像に加えて側面からもX線を照射し水平画像を得て、AIエンジンにより水平/垂直の画像を、画像処理、前段/後段の認識処理を経て、統合認識してリチウムイオン電池を検出できる。これにより、検出精度を高めている」と語った。
今回の実証実験では、1日当たりパッカー車1台分(600〜750kg)のごみを対象に、リチウムイオン電池検知システム試作機に搭載されたX線検査センサーとRaptor VISION BATTERYを活用し、同電池をはじめとする危険物を検出して、検知技術とその有効性を検証した。
具体的には、不燃ごみに混入したリチウムイオン電池搭載製品の種類、数量、重量などを調査。リチウムイオン電池検知システムの検知精度を評価し、不適ごみ検知後の除去作業など、運用を含めた有効性も評価した。加えて、搬入ごみの種類、形態、処理量や、防水/防塵(ぼうじん)などの条件/環境下における有効性も調べた。
また、ごみやリチウムイオン電池などを袋に入れた状態と、袋から出した状態の両方で検知を行い、精度の確認を進めた。
小山氏は、「今回の実証実験では、リチウムイオン電池検知システム試作機を活用することで、熟練した作業員でなくても危険物を発見できるようになり、作業効率が向上していると聞く」とコメントした。
今後PFUは、刃物などの危険物も検知できるように、リチウムイオン電池検知システムに搭載しているAIの学習を進めていく予定だ。
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