段ボールの開封および容器への移し替えもロボットが行う。
ロボットは、段ボールをつかむためのハンドに自動で交換し、段ボールを吸着して開梱するためのステージに載せる。その後、段ボールを開梱するためにカッターが付いたハンドに交換し、段ボールの側面をスキャンしてカット経路を生成して段ボールをカットする。これを4つの側面で行うことで、梱包の個体差によるカット不良も抑制し、ティーチングの手間を削減している。最後に、吸着で上面の蓋を外す。
スピリッツ・リキュール工房では、クラフト袋、バケツ、ダンボールといった梱包原料を扱っており、サイズもさまざまだ。また、冷凍原料や常温原料があり、2重梱包になっている原料もある。「多様な形態に対して、それぞれ専用の自動化設備を持つのではなく、同じロボットを用いて取り扱えるようにすることで、限られたスペースの中で自動化できた」(高橋氏)。
計量/検査工程では、従来は材料を投入するタイミングで、人の目や鼻で原料に腐敗などの異常がないかをチェックしていた。
今回は、容器に移し替えられた原料の揮発物質を測定することで腐敗の有無を特定し、さらに原料表面の画像データをAIで解析して、色味の異常や異物混入に気付くことができる仕組みをロボットシステムの中に組み込んだ。
まず、ロボットは前工程で容器に移し替えられた原料を把持し、ステージに置く。ステージは回転するようになっており、まず揮発物質を吸引して腐敗がないかを検査。その後、再びステージが回り、カメラの下に原料を移動させて撮影し、AIを活用して異常がないかを検査する。
その間にロボットは並行して原料を計量しており、検査と計量を同時並行で行える仕組みを構築した。
検査後の原料は、ロボットが取得できる位置までテーブルが回転し、ロボットは次に検査する原料をテーブルに置き、検査が終わった原料を待機しているAGVの上に置いて、AGVが次の投入工程まで自動的に搬送する。
今回の自動化の取り組みで、人が原料を取り扱う作業時間は3分の1まで圧縮されており、年間約2000時間の削減につながる見込みだ。「自動化で創出された時間は、現場の技術者と、味わいや香りを作る中味開発者による開発と生産の一体化を実現するための時間になる」(高橋氏)。
全体では7台のロボット、8台のAGVを導入した。7割以上の原料の取り扱いが自動化できたが、今後はサイズが大きかったり、逆に極端に小さかったりして今回自動化の対象外となった梱包原料や、スピリッツ・リキュール工房以外の工程への適用も検討している。
ただ、今回の規模の原料取り扱い自動化設備の導入は大阪工場でも初めてなことから、高橋氏は「まずはしっかりと設備への理解を深め、安定して止まらない設備の実現を目指していきたい」と話す。
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