キヤノンは宇都宮事業所内に建設した半導体製造装置の新工場の開所式を行った。
キヤノンは2025年7月30日、宇都宮事業所(栃木県宇都宮市)内に建設した新工場の開所式を行った。新工場では需要が旺盛な半導体製造装置を生産。工場内物流は徹底的に自動化を図り、生産効率を大幅に向上させる。
キヤノンのインダストリアルグループは、半導体やディスプレイの製造装置を手掛けており、半導体製造プロセスの中でウエハーを接合する原子拡散接合装置や成膜するスパッタリング装置、前工程および後工程向けの露光装置などを展開している。同社によれば現在、半導体露光装置としてグローバルで3割、i線露光装置に限れば7割のシェア(いずれも台数ベース)を持つという。
新工場が建設された清原工業団地には、キヤノンの一眼レフカメラ用レンズなどを製造する宇都宮工場、半導体露光装置や液晶露光装置の開発、生産などを行う宇都宮光学機器事業所、光学関連の研究開発を行う光学技術研究所が集結している。約4500人が働くキヤノンの光学技術と超精密技術の総本山となっている。
新工場は2023年に着工。今後、装置を搬入して2025年9月の稼働を予定している。まず第1期として新工場内に完成したクリーンルームでi線およびKrF(フッ化クリプトン)の露光装置を製造し、第2期としてレンズ加工エリアを設けて、露光装置に組み込まれるレンズの生産を開始する。設備を含めた総投資額は約500億円、工場の延べ床面積は6万7518m2となっている。2025年中に約550人、本格稼働する2027年以降に約1300人が働く見通しだ。これらは新規雇用や配置転換がまかなわれる。
新工場は、先端技術と匠の技が融合した、新世代のスマートファクトリーを目指している。
新たな部品管理システムと搬送システムを導入し、全ての工程で高度な自動化を図る。部品の保管エリアでは搬送ロボットを活用し、部品の納品、保管、出庫は全て自動で行う。部品の保管位置は固定されず、自動フォークリフトや搬送ロボットが部品が置かれた棚やパレットごと運ぶことで、レイアウトの自在な組み替えを可能にし、生産進捗に応じて必要時に部品取り出し場所までジャストインタイムで搬送する。
保管エリアからクリーンルーム内の組み立てエリアへの部品の搬送は、保管エリア側の搬送ロボットが部品をエアシャワーまで運んでから、クリーンルーム専用搬送ロボットと信号連携することで受け渡しを行う。
クリーンルームの組み立てエリアは8577m2。部品の洗浄から照明光学系の小物、ステージなどの大物のユニット、本体の組み立て、さらには梱包(こんぽう)、出荷まで連続して動線がつながるようにし、生産を効率化した。エリア内を自由に移動できる内製の協働ロボットも導入する。
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