ガンダムに憧れ月面を研究 月の石は地球が失った情報を記録した「メディア」材料技術(1/4 ページ)

立命館大学 宇宙地球探査研究センター ESEC 准教授の長岡央氏は「月面での『その場探査』・サンプル採取技術開発への挑戦〜月の石は地球創成の“ナノレベルのタイムカプセル”〜」と題した講演を行った。

» 2025年07月30日 06時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 立命館大学 宇宙地球探査研究センター(ESEC)は2025年6月25日、オンラインでセミナー「月の物質を分析する技術(リターンサンプル分析)」を開催した。同セミナーでは、ESEC 准教授の長岡央氏が「月面での『その場探査』・サンプル採取技術開発への挑戦〜月の石は地球創成の“ナノレベルのタイムカプセル”〜」と題した講演を行った。

大学時代に月周回機「かぐや」のプロジェクトに参加

 「小学生低学年のときにガンダムに憧れ、宇宙に行くロボットを作りたいと考えていた。高学年では恐竜や化石、石に興味を持った」という長岡氏は、早稲田大学 理工学部物理学科に進学後、同大学大学院 先進理工学研究科に進み、博士号を取得した。その後、早稲田大学の講師や宇宙航空研究開発機構(JAXA) 宇宙科学研究所のプログラムディレクター、理化学研究所の職員を経て、現職に就く。

長岡央氏の経歴 長岡央氏の経歴[クリックで拡大] 出所:ESEC

 同氏の専門は、惑星科学、月や惑星の調査、放射線核分光だ。研究テーマは「放射線計測を惑星科学へ応用/材料物質や形成条件を調査」「月探査」「月探査用の科学観測装置の開発」となっている。「早稲田大学 理工学部物理学科に在籍時は、放射線計測により、月表面の分析を行った他、2007年に打ち上げられた月周回機『かぐや』に装着されたガンマ線分光計で取得した月面の元素分布の解析などで協力した。2024年に打ち上げられた月着陸実証機『SLIM』に搭載したマルチバンドカメラの開発にも関わった。現在は、月面で水資源を探索する月極域資源探査機『LUPEX』の開発に協力している」(長岡氏)。

長岡氏の専門 長岡氏の専門[クリックで拡大] 出所:ESEC

 かぐやは、月の全球観測や元素/鉱物分布の取得を行い、月面におけるさまざまな元素/鉱物の位置や量を明らかにした。SLIMは、月面へのピンポイント着陸技術の実証と観測を目標に掲げ、ターゲットとしたサイトに高精度で着陸し、同技術の成功事例が得られた。2026年以降に打ち上げ予定のLUPEXは、ローバーによる移動調査や月面での長期間の活動、月資源の調査を目的としている。2030年頃には、米国のアルテミス計画をはじめとするプロジェクトで、国際協力によって有人月面探査ミッションが行われる予定だ。この有人月面探査ミッションでは、有人活動や有人与圧ローバーによる長距離移動、その場での調査活動を実施する。「日本のチームでは、かぐや、SLIM、LUPEXで得られた技術を有人月面探査ミッションに活用したいと考えている」(長岡氏)。

かぐや、SLIM、LUPEXの役割 かぐや、SLIM、LUPEXの役割[クリックで拡大] 出所:ESEC
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