中間品の構造特徴量で予測精度を高めるプロセスインフォマティクス技術マテリアルズインフォマティクス

日立製作所と日立ハイテクは、中間工程品の構造特徴量を使って製品性能の予測精度を高めるプロセスインフォマティクス技術を共同開発した。この技術は、中間工程品の構造特徴量を抽出し、AIを用いて性能を予測して、製造情報へフィードバックする。

» 2025年07月17日 11時00分 公開
[MONOist]

 日立製作所と日立ハイテクは2025年6月26日、中間工程品の構造特徴量を使って製品性能の予測精度を高めるプロセスインフォマティクス技術を共同開発したと発表した。

 同技術は、製造プロセスの最適化を支援する「製造プロセス改善ソリューション」で用いる新技術として開発された。中間工程品の走査電子顕微鏡(SEM)画像データから構造特徴量を抽出し、AI(人工知能)を用いて性能を予測して、製造情報へフィードバックする。これまでは製造時に設定した情報を基に性能を予測していたが、中間工程品の構造特徴量を利用することで、製品性能との相関性が高まり、予測精度が向上する。

キャプション プロセスインフォマティクス技術を導入したリチウムイオン電池製造プロセスのイメージ[クリックで拡大] 出所:日立製作所

 実際にリチウムイオン電池の試作ラインで検証した結果、限られたデータでも性能予測の精度が高まることを確認できた。また、リチウムイオン電池製造の中間工程品である電極シートの構造特徴量を抽出し、ML(機械学習)モデルへ適用したところ、予測誤差の平均値が0.55から0.24へと低減。構造特徴量を入力した説明変数について寄与度を評価すると、目的変数である電池性能との相関性が明確になった。

キャプション MLモデルの予測精度検証結果について、従来(左)と今回(右)との比較。予測対象は電極内のイオン伝導抵抗で、赤点線は予測一致を意味する[クリックで拡大] 出所:日立製作所

 日立ハイテクは、高真空を必要としないSEMを開発しており、同装置を用いることで電極シート表面の観察像を数分で取得できた。画像解析によって電極中の凝集や空隙構造、構成要素の分布を反映した構造特徴量を抽出。電池性能を測定する前の段階において、中間工程品である電極シートの良否を抽出データを用いて判別することで、品質異常リスクを早期に検知して迅速に対応できるようになる。

 製造業では近年、市場の急速な変化に対応するため、製造ラインの迅速な立ち上げと製造プロセスの効率化が求められている。製品の品質や性能をAIで高精度に予測するには大量の学習データが必要になるため、時間とコストの面で課題があった。そこで両社は、製造途中の中間工程品に着目。構造特徴量抽出技術とインフォマティクス技術を組み合わせて、限られた学習データでも製品性能を高精度に予測できるプロセスインフォマティクス技術を開発した。

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