バイオマスや有機廃液からクリーンな電力や水素を、高純度のCO2の分離/回収も脱炭素

JFEエンジニアリングは、大阪ガスと共同で開発を進めているケミカルルーピング燃焼技術が、NEDOの「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/次世代火力発電基盤技術開発/CO2分離・回収型ポリジェネレーションシステム技術開発」の助成事業に採択されたと発表した。

» 2025年07月01日 07時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 JFEエンジニアリングは2025年6月27日、大阪ガスと共同で開発を進めているケミカルルーピング燃焼技術が、エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/次世代火力発電基盤技術開発/CO2分離・回収型ポリジェネレーションシステム技術開発」の助成事業に採択されたと発表した。

高温熱やクリーン水素を生成可能

 今回の事業は、ケミカルルーピング燃焼技術を用いてバイオマスや有機廃液などから水素、電力、CO2を同時に製造するプロセスの実証試験に取り組む。なお、バイオマスに代表される固体燃料を直接反応器に投入し、電力、水素、CO2を同時に製造するプロセスの実証試験は世界初の取り組みだという(JFEエンジニアリング調べ)。

 ケミカルルーピング燃焼技術は、バイオマスや、半導体/化学製品の製造時に発生する有機廃液などを燃料にし、空気中の酸素を用いずに、酸化鉄などの金属酸化物中の酸素を使って燃焼させる技術だ。燃焼排ガス中に空気由来の窒素や窒素酸化物が混入しないため、高純度のCO2を容易に分離/回収できる。

 さらに、燃料との反応により一部の酸素を失った金属酸化物は、空気と反応させればクリーン電力発電用蒸気に利用できる高温熱を、水と反応させればバイオマスや有機廃液由来のクリーン水素を生成可能だ。この工程により金属酸化物は燃料との反応前の状態に戻り、新たに燃料を投入することで、再び一連の反応を繰り返す。

ケミカルルーピング燃焼技術の事業スキーム ケミカルルーピング燃焼技術の事業スキーム図[クリックで拡大] 出所:JFEエンジニアリング

スケールアップ機の開発も検討

 JFEエンジニアリングは2022年度からNEDOの委託事業の中で、大阪ガスと同社の共同事業者であるカーボンフロンティア機構(JCOAL)の再委託先として、反応に用いる金属酸化物の選定やコールドモデル試験装置を用いた流動性の確認などの要素技術開発を担ってきた。こういった一連の技術開発結果を基に、今回の事業で使用する300kW級装置の系統設計、機器/製作品に関する基本設計を実施した。今回の事業では、2027年度までに300kW級実証機を建設し、実証試験に取り組む。

 実証試験では、JFEエンジニアリングが主に実証機の詳細設計および品質管理を担当し、大阪ガスは主に実証機の建設工事および試運転を担う。共同で進める実証機の運転で得られた成果を踏まえ、さらなるスケールアップ機の開発も検討する。

 JFEエンジニアリングと大阪ガスは、今回の事業の成果を基に、バイオマスや有機廃液から水素、電力、CO2を同時製造するケミカルルーピング燃焼プラントの商用化を目指す。

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