では、アセンブリ全体に与えられたサイズ公差から、構成部品それぞれのサイズ公差を求めると、どのようになるのでしょうか。
例えば、アセンブリの総厚が50mmで、そのサイズ公差をJIS B 0405-1991の「精級」に準じて±0.15mmとしたい場合を考えます。このとき、共通仕様の5枚の部品の板厚にどのようなサイズ公差を設定すればよいかを、互換性の方法と不完全互換性の方法のそれぞれの観点から見ていきます。
このように比較すると、不完全互換性の方法で求めた部品公差は、互換性の方法で求めた値よりも約√5倍、大きな許容範囲となっていることが分かります。
つまり、アセンブリの総厚を必ず50±0.15mmに収めたい場合には、互換性の方法に基づく厳しい部品公差(±0.03mm)を適用する必要があります。一方、多少の確率的なバラつき(外れ値)が発生することを許容できる場合には、不完全互換性の方法により、より緩やかな部品公差(±0.067mm)を適用することが可能となります。
公差の考え方一つで、製品の精度、品質、コストは大きく変化します。ここでは、互換性の方法と不完全互換性の方法について、それぞれの特徴とどのように使い分けるべきかについて説明します。
次回は、公差計算の具体的な手順や算出方法について解説します。お楽しみに! (次回へ続く)
Q1. なぜ公差設計が重要なのですか?
A. 部品などを製造する際、「人・機械・材料・方法(4M)」の要因によって、どうしても寸法にバラつきが生じます。そのため、製品の機能や品質を安定させるには、こうしたバラつきを前提に「どの程度までズレを許容できるか」をあらかじめ設計段階で定める必要があります。それが「公差設計」です。
Q2. 「互換性の方法」とは何ですか?
A. 「互換性の方法」は、各部品の寸法が最悪のケース(ワーストケース)でズレた場合を想定し、全ての部品が組み合わさっても機能を果たせるよう設計する手法です。この方法では、どの部品を交換しても組み立て寸法が必ず許容範囲内に収まり、完全な互換性が確保されます。ただし、部品の公差が厳しくなるため、製造コストは高くなります。
Q3. 「不完全互換性の方法」とは何ですか?
A. 「不完全互換性の方法」は、部品の寸法が正規分布に従うという統計的な前提の下、全ての部品が最大ズレになる確率は低いと考えて公差を緩く設定する手法です。この方法では製造コストが抑えられ、量産向きですが、完全な互換性は保証されません。
Q4. どちらの公差計算を使うべきですか?
A. 目的や製品の使用条件などによって使い分ける必要があります。
使い分けのイメージ:
公差設計は、設計者の判断力が試される重要なポイントです。
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