大日本印刷は、口の中で溶ける医薬品である口腔内崩壊錠のような水分を嫌う製剤に対し、流通/販売時などの水分/湿気による品質低下を防ぐ乾燥剤が不要なPTP用樹脂シートを開発した。
大日本印刷(DNP)は2025年6月19日、口の中で溶ける医薬品である口腔内崩壊(Orally Disintegrating:OD)錠のような水分を嫌う製剤に対し、流通/販売時などの水分/湿気による品質低下を防ぐ乾燥剤が不要なPTP(Press Through Package)用樹脂シートを開発したと発表した。
OD錠は一般的に湿気を吸収すると品質が低下するという特性があることから、従来の包装材は、湿気の透過を防ぐアルミ箔で覆われたアルミブリスターを使用するなどの対応が必要だった。
このアルミブリスターは透明ではなく中身が見えないため、医薬品メーカーでの包装後の錠剤の検査、調剤薬局での監査に手間がかかるという課題があった。また、アルミブリスターを使わない場合は、アルミ箔のピロー型包装にPTPシートと湿気を吸収する乾燥剤を封入していたが、その手間とコストも課題となっていた。このような課題の解決に向けてDNPは今回、自社の吸湿包材技術を応用して、吸湿性のある透明なPTP用樹脂シートを新たに開発した。
DNPが開発したPTP用樹脂シートは、1m2当たり4gの吸湿性能を備えており、シート内の残存水分を吸収する。この性能により、水分/湿気による品質の低下が懸念される製剤の品質を保持できる。従来のシートは、外部からの湿気の透過を防ぐために水蒸気のバリア性能を高めており、パッケージ内の水分/湿気を除去できなかった。
今回のシートは吸湿材料を使用しても高い透明性を保て、内容物の視認性を確保できる。パッケージ内部が見えないアルミブリスターと比べて製剤の確認が容易になり、誤飲の防止や、利便性/安全性の向上にもつながる。調剤薬局ではピッキングの際、湿度に弱い製剤をピロー包装から出して棚に収納でき、薬剤師の作業効率の向上に貢献する。
さらに、従来のシートに吸湿機能を付与可能で、パッケージ外部から透過してくる水蒸気も吸収する。これによりシート全体の防湿性を高められる。シートのベースとなる基材には、製品の特性に応じて、ポリプロピレン(PP)とポリ塩化ビニール(PVC)を選べる。リサイクルしやすいPPを使用することで環境に配慮した設計が行える。
今後DNPは、透明性と吸湿性を兼ね備えた医薬品包装向けPTP用樹脂シートを製薬メーカーに提供し、2030年度までに年間3億円の売上高を目指す。
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