PETボトルリサイクルの救世主 液相重合で高品質に再生できるワケとは?素材/化学インタビュー(3/4 ページ)

» 2025年05月28日 07時00分 公開
[遠藤和宏MONOist]

生産中における時間や作業のロスが少ない理由

横田氏 「リアルタイムにIV値を計測。状態変化に素早く対応」について、SSP装置は基本的にバッチ処理でIV値をオンライン計測していない。P-REACTのLSP装置は、連続的なプロセスでIV値をリアルタイム(生産工程中)に測れる。この計測値を用いて重合で必要な真空システムの調整を行うことで、生産中における時間や作業のロスが少ない。

P-REACTはリアルタイムにIV値を計測可能 P-REACTはリアルタイムにIV値を計測可能[クリックで拡大] 出所:アルテック新材料

MONOist 生産中における時間や作業のロスが少ない点について詳しく教えてもらって良いでしょうか。

横田氏 PETボトルの材料としてリサイクルPETボトルを利用するためには、IV値を0.78〜0.8dl/gに上げなければならない。ただし、リサイクルの過程で熱や冷却の負荷がかかるとIV値は下がってしまう。そのためSSPやLSPでIV値を上げる必要がある。

 PETボトルのフレークでSSPを行うPET樹脂再生装置には、円柱型の容器「チャンバー」に一定量のフレークをためた後、時間をかけてSSPでIV値を上げるタイプが多い。このタイプはフレークをためる時間とSSPでIV値を上昇させるための時間がかかる。そのため、IV値を0.1dl/g上昇させるのに5〜7時間がかかる。さらに、IV値の上昇や除染のレベルが目標の値に達していないなどの問題があった場合、チャンバー内のフレークを再度重合しなければならず、業務時間や作業にロスが生じる。

 一方、P-REACTのLSP装置は、液相重合の時間を計測できる他、目標のIV値を設定すれば装置内における温度、滞留時間、溶けたPETフレークの蓄積量を自動調整して管理可能なため、IV値の上昇や除染のレベルなどで問題が起きにくい。

 P-REACTはバッチ式ではなく、溶融PETが約25分間にわたりLSP装置内に滞留、その間に重合反応が効率的に進む。SSPとの大きな違いはこの点であり、作業の時間短縮やロス削減が可能となる。

MONOist 良く分かりました。引き続き、P-REACTのポイントについて教えてください。

横田氏 「除染効率が非常に良い」では、SSPは使用済みPETボトルのフレークやペレットで重合を行うため内部まで除染するのに時間がかかるが、P-REACTはPETボトルのフレークを液状にすることで表面積を大きくしてLSPを行い除染効率を高めている。P-REACTのLSP装置はシャワーヘッドから糸状にPETを流してバキュームで吸いつつ除染する。糸状のPETはペレットやフレークより表面積が大きいため効率的に除染しやすい。

P-REACTのLSP装置はSSPでは除去できないスピニングオイルを取り除ける P-REACTのLSP装置はSSPでは除去できないスピニングオイルを取り除ける[クリックで拡大] 出所:アルテック新材料

横田氏 また、PETボトルが容器として使われることで染み込んだスピニングオイルも除去可能なことに加えて、ステアリン酸メチルやベンゾフェノン、フェニルシクロヘキサン、サリチル酸メチル、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエンを除染でき、これらの残留濃度を下げられる。

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