1952年11月に操業を開始した王子製紙米子工場は、木材を原料に、パルプ懸濁液から水分を取り除き、繊維を絡み合わせてシート状にする抄紙(しょうし)、紙への塗工までを一貫で行える大型の製紙工場だ。工場内には、4台の抄紙機と5台の塗工機が24時間稼働しており、高級なグラフィック用紙や白板紙を生産している。
同工場は、チップヤードを備えている他、パルプ製造、抄紙、塗工の工程に対応する設備を有している。
紙の原料は木材と古紙(新聞や段ボール、板紙の主原料)だが、米子工場では木材のみを使用。チップヤードは、海外の植林木や国内の製材廃材、未利用材をチップ化した「木材チップ」を保管している場所だ。近隣の境港にはより大きなチップヤードがあり、そこから木材チップを毎日トラックで米子工場にピストン輸送している。
パルプ製造工程では、薬品を加えて木材チップを圧力容器「蒸解窯」で高温で煮込み、木材中のセルロースを主成分とする繊維を取り出す。これがパルプだ。製造したパルプは材料由来の茶色で、これをそのまま製紙すれば、紙袋などで利用されているクラフト紙になる。米子工場では、茶色のパルプに酸素やオゾンなどを使って漂白し、白いパルプを作る。
抄紙工程では、製造した白いパルプを使って紙を生産する。水で濃度1%程度に薄めたパルプ液に対し、抄紙機「N-1マシン」を用いて、高速で回転するワイヤ上に噴射して、徐々に脱水し、乾燥させて紙を作る。N-1マシンは紙のサイズをコントロールする機能も搭載している。この機能を用いて1日で、幅8mの紙から、米子から北海道まで1000km以上もの長さの紙を製造することもできる。
塗工工程では、炭酸カルシウムなどから成る塗料を紙にコーティングすることでインク乗りが良好な高級グラフィック用紙などに仕上げる。米子工場はこのコーティング技術の高さに定評があり、同工場でしか生産できない高級グラフィック用紙は多く存在する。
同工場で生産した製品の出荷は貨物輸送で行われる。工場の敷地内には、工場の敷地内には、JR山陰本線からの引き込み線があり、ここから全国各地に電車により製品が運ばれている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.