ここまで、ChatGPTを活用して作成したプロンプトで第1バージョンの要求仕様書を作成し、この第1バージョンの要求仕様書をブラッシュアップするためのプロンプトをChatGPTで作成するなどしてきました。
最終的に筆者が生成した要求仕様書の作成例を下記に示します(要求仕様書にある文章は、ほぼChatGPTの出力通りです。なお、ChatGPTは、画像データの出力が苦手であるため、イメージ画像はありません)。
------------個人経営のワインショップECサイト要求仕様書(開始)-------------
(1)概要
本ソフトウェアは、個人経営のワインショップにおいて、一般消費者がPCを利用してワインを購入できるECサイトを構築することを目的とする。トップページに指定されたワインを一覧表示し、商品画像クリックにより購入完了メッセージを表示するシンプルな構成とする。
(ア)背景
株式会社ワールドワインショップでは、商店街にある小規模なワインショップを経営している。良質なワインを取りそろえているが、売り上げをさらに拡大するため、店舗販売に加えてECサイトによる販売チャネルを新設することとなった。
(イ)目的
遠方の顧客や新規顧客に向けて、手軽にワインを購入できるオンライン環境を提供し、売上増加とブランド認知向上を図ることを目的とする。
(ウ)用語の定義
(2)関連資料
(なし)
(3)機能要求
(ア)機能構成
トップページ
├─ 商品一覧表示(6商品)
│ ├─ 商品名表示
│ ├─ 価格表示
│ └─ 本数入力フォーム
│ └─ 商品画像クリック→購入完了メッセージ表示
(イ)機能一覧
(4)制約条件
------------個人経営のワインショップECサイト要求仕様書(終了)-------------
作ってみた感想ですが、フォーマットに従って要求仕様書を埋めてくれたので、たたき台として十分機能しそうです。後は、気になる箇所をリライトすればいいのではないでしょうか。ただし、残念ながら画像ファイルは、筆者のプロンプトでは出力しないので、別途作る必要があります。※1)
※1)なお、別途、画像ファイルをChatGPTで出力するように指示しましたが、意図した画像を出力できませんでした。画像ファイルは自分で作った方が早いかもしれません。
今回は、生成AIを活用して簡単な要求仕様書を作成しました。生成AIを活用すると、要求仕様書のたたき台をすぐに出力できます。また、プロンプトそのものも生成AIで作成すると、より期待に近い出力結果を得ることができるでしょう。「勉強」という観点からは、本シリーズのタイトル通り“イチから作る”ことも大事ですが、生成AIを活用して効率よく目的をこなすことも検討していただければと思います。
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人間環境大学 環境情報学科 教授(工学博士)
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