イチから全部作ってみよう(20)生成AIを使えばイチから要求仕様書を作らずに済む山浦恒央の“くみこみ”な話(189)(4/4 ページ)

» 2025年05月22日 09時00分 公開
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5.筆者の要求仕様書の作成例

 ここまで、ChatGPTを活用して作成したプロンプトで第1バージョンの要求仕様書を作成し、この第1バージョンの要求仕様書をブラッシュアップするためのプロンプトをChatGPTで作成するなどしてきました。

 最終的に筆者が生成した要求仕様書の作成例を下記に示します(要求仕様書にある文章は、ほぼChatGPTの出力通りです。なお、ChatGPTは、画像データの出力が苦手であるため、イメージ画像はありません)。

------------個人経営のワインショップECサイト要求仕様書(開始)-------------

(1)概要

本ソフトウェアは、個人経営のワインショップにおいて、一般消費者がPCを利用してワインを購入できるECサイトを構築することを目的とする。トップページに指定されたワインを一覧表示し、商品画像クリックにより購入完了メッセージを表示するシンプルな構成とする。

(ア)背景

株式会社ワールドワインショップでは、商店街にある小規模なワインショップを経営している。良質なワインを取りそろえているが、売り上げをさらに拡大するため、店舗販売に加えてECサイトによる販売チャネルを新設することとなった。

(イ)目的

遠方の顧客や新規顧客に向けて、手軽にワインを購入できるオンライン環境を提供し、売上増加とブランド認知向上を図ることを目的とする。

(ウ)用語の定義

  • ECサイト:インターネット上で商品を販売するためのWebサイト
  • 購入者:本サイトを利用してワインを購入する一般消費者
  • 商品:本サイトで取り扱うワインのこと
  • 本数:購入希望の数量を示す入力項目

(2)関連資料

(なし)

(3)機能要求

(ア)機能構成

  • トップページ表示
    • 商品一覧表示(6商品)
    • 購入手続き
    • 本数入力フォーム
    • 商品画像クリックによる購入完了メッセージ表示

トップページ
 ├─ 商品一覧表示(6商品)
 │  ├─ 商品名表示
 │  ├─ 価格表示
 │  └─ 本数入力フォーム
 │    └─ 商品画像クリック→購入完了メッセージ表示

(イ)機能一覧

  • トップページ表示
    • 「ワールドワインショップ」のタイトルを表示する
    • 指定された6種類のワイン商品を一覧表示する
      • シャトー・マルゴー(赤ワイン)
      • モンラッシェ・ルフレーヴ(白ワイン)
      • ミラヴァル(ロゼワイン)
      • シュフマン・ルカツィテリ(オレンジワイン)
      • ボランジェ・スペシャル・キュヴェ(発泡白ワイン)
      • ポメリー・ロゼ(発泡ロゼワイン)
  • 商品情報の表示
    • 商品名、価格を表示する
  • 本数入力フォームの提供
    • 商品ごとに本数を入力できるテキストボックスを表示する
  • 購入完了メッセージの表示
    • 商品画像をクリックした際、「購入しました。」というポップアップメッセージを表示する

(4)制約条件

  • 対象デバイスはPCのみとする
  • モバイルデバイス対応は考慮しない
  • 決済機能、カート機能、在庫管理機能は実装しない
  • ページ表示および購入完了メッセージ表示にのみ対応する
  • UIはシンプルな表形式とし、複雑なレイアウトや演出は行わない
  • 非機能要求(例:表示速度、セキュリティ、アクセシビリティー)は本仕様では扱わない

------------個人経営のワインショップECサイト要求仕様書(終了)-------------

 作ってみた感想ですが、フォーマットに従って要求仕様書を埋めてくれたので、たたき台として十分機能しそうです。後は、気になる箇所をリライトすればいいのではないでしょうか。ただし、残念ながら画像ファイルは、筆者のプロンプトでは出力しないので、別途作る必要があります。※1)

※1)なお、別途、画像ファイルをChatGPTで出力するように指示しましたが、意図した画像を出力できませんでした。画像ファイルは自分で作った方が早いかもしれません。

6.おわりに

 今回は、生成AIを活用して簡単な要求仕様書を作成しました。生成AIを活用すると、要求仕様書のたたき台をすぐに出力できます。また、プロンプトそのものも生成AIで作成すると、より期待に近い出力結果を得ることができるでしょう。「勉強」という観点からは、本シリーズのタイトル通り“イチから作る”ことも大事ですが、生成AIを活用して効率よく目的をこなすことも検討していただければと思います。

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【 筆者紹介 】
山浦 恒央(やまうら つねお)

人間環境大学 環境情報学科 教授(工学博士)


1977年、日立ソフトウェアエンジニアリングに入社、2006年より、東海大学情報理工学部ソフトウェア開発工学科助教授、2007年より、同大学大学院組込み技術研究科准教授、2016年より非常勤講師。2025年4月より、人間環境大学環境情報学科教授。

主な著書・訳書は、「Advances in Computers」 (Academic Press社、共著)、「ピープルウエア 第2版」「ソフトウェアテスト技法」「実践的プログラムテスト入門」「デスマーチ 第2版」「ソフトウエア開発プロフェッショナル」(以上、日経BP社、共訳)、「ソフトウエア開発 55の真実と10のウソ」「初めて学ぶソフトウエアメトリクス」(以上、日経BP社、翻訳)。


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