NIISは、次期バージョンのX-Road 8に向けて、図3に示すような形で、 X-RoadのトラストフレームワークとGaia-Xのトラストフレームワークとの連携を図ろうとしている。
Gaia-Xは、欧州が主導するデータインフラストラクチャのプロジェクトで、信頼性の高い分散型デジタルエコシステムの構築を目標とするコンソーシアムである(関連情報)。
特に、データの透明性、セキュリティ、データ主権を強化しながら、企業間や異分野間でのデータ連携を推進している。X-Road 8では、相互のX-Roadエコシステム間およびX-Roadエコシステムとデータスペースの間について、標準的なデータスペースプロトコルを採用するとしている。
現在、Gaia-Xの保健医療領域では、Dataspace4Health(関連情報)というEHDS関連プロジェクトが進行中である。Dataspace4Healthは、NTTデータ、ローベル・シューマン病院財団、ルクセンブルク保健研究所、ルクセンブルク大学、ルクセンブルク保健庁、ルクセンブルク国家データサービスから構成される産官学連携コンソーシアムであり、ヘルスケアエコシステム内のさまざまなステークホルダーを相互接続して、越境型保健データスペースを構築することを目標としている。直近では、2025年3月31日〜4月4日にドイツで開催されたハノーバーメッセにおいて、Dataspace4Healthが、NTTグループ、富士通などとともに出展している(関連情報)。
X-Roadによるデータ交換基盤が整備され、EOSCのベストプラクティスとなっているアイスランドでは、電子政府基盤を利用して市民が自分の保健医療情報にアクセスできる「国家市民ヘルスポータル」アプリケーションが提供されている(関連情報)。
また、アイスランドでは、「保健医療分野データベース法」(1998年)および「バイオバンク法」(2000年)に基づいて、バイオバンクが発達してきた(関連情報)。アイスランドの代表的なバイオバンクであるデコード・ジェネティクス(deCODE genetics)は、米国のバイオテクノロジー企業アムジェン(Amgen)の子会社として運営されている。
本連載第90回で取り上げたように、北欧閣僚理事会は、アイスランドが議長国を務めていた2019年8月20日、5カ国共通の「2030年ビジョン」(関連情報)を採択している。
現在開催中の「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」では、5カ国共同で北欧パビリオンを出展する一方、各国の地政学的特徴を生かした個別イベントを企画するなど、積極的に取り組んでいる。特に、EU未加盟のアイスランドやノルウェーの取り組みは、同じくEU未加盟の日本が欧州全体との関係性強化を図るに当たって、参考となる点が多い。
笹原英司(ささはら えいじ)(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)
宮崎県出身。千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所、グロバルヘルスイニシャチブ(GHI)等でビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。
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