本連載第30回よび第57回で、エストニアのデジタルヘルスやイノベーションの推進施策を取り上げた。今回は、Withコロナ期以降、グローバルに拡大するデジタルヘルス先進国エストニア発のICTの事業展開を取り上げる。
本連載第30回および第57回で、エストニアのデジタルヘルスやイノベーションの推進施策を取り上げた。今回は、Withコロナ期以降、グローバルに拡大するデジタルヘルス先進国エストニア発のICTの事業展開を取り上げる。
2023年4月24〜28日、エストニア経済産業省傘下のエンタープライズ・エストニア(EAS、関連情報)とエストニア商工会議所(関連情報)は、同国のICT企業7社とともに、日本企業との協業促進を目的として大阪および東京を訪問した。筆者はこの使節団に同行する機会があったので、WithコロナからPostコロナに向けて海外事業を展開するエストニアICT企業のユースケースを紹介する。来日した7社の概要は表1に示す通りである。
サイバーネティカ(Cybernetica、関連情報)は、データ交換プラットフォーム向けソリューションを提供する企業である。例えば2022年7月21日、同社は、マレーシア政府向けのデータ交換プラットフォーム構築作業を完了したことを公表している(関連情報)。同社は、エストニアの電子政府プロジェクトにおいてオープンソースのデータ連携基盤「X-Road」を導入した経験/ノウハウをベースに、データ交換プラットフォームの「UXP(Unified eXchange Platform)」(関連情報)をソリューション化し、海外へのパッケージ輸出で実績を上げてきた。
今回サイバーネティカは、マレーシアのICT企業であるHLA Integratedとパートナーシップを締結し、約6カ月かけてUXPを導入し、マレーシアの政府機関同士のセキュアで相互運用性のある文書/サービス交換を実現している。本リリース発表時点で、地方政府から中央政府まで、約10の政府機関が接続されており、2023年末までには、加えて30の政府機関が接続されるとしている。
なお、サイバーネティカは、このプロジェクトに先駆けて、マレーシア政府向けに海上監視ソリューションを導入した実績がある。また、医療/ライフサイエンス関連では、本連載第93回で取り上げたプライバシー保護技術(PET)であるプライバシー保護臨床意思決定支援ツールを、英国の医薬品企業グラクソ・スミスクラインと共同で開発/導入している(関連情報)。さらに、日本の三井住友信託銀行およびNECとの間で、健康/ウェルビーイング分野におけるUXP利用に関する覚書(MoU)を締結する(関連情報)など、活発な海外事業展開を行っている。
サイベクサー・テクノロジーズ(CybExer Technologies、関連情報)は、2020年2月3日、合同サイバー演習「Crossed Swords 2020」に専門家を派遣し、北大西洋条約機構(NATO)のサイバー防衛協力センター(CCDCOE)、ラトビアのCERT.LVおよびその他のパートナーとともに、演習プログラムの開発、検証、実装を行ったことを公表した(関連情報)。「Crossed Swords 2020」は、ラトビアのリガで開催されたレッドチーム演習であり、26カ国から120人以上のサイバーセキュリティ専門家が参加している。その後2020年8月24日には、エストニア防衛連盟のサイバーユニットとラトビア国家警備隊が参加したCTF(Capture The Flag)形式演習に対するサポートを行ったことを公表している(関連情報)。
さらに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの環境下でも、2020年11月にはルクセンブルク(関連情報)、2022年10月にはポーランド(関連情報)、2022年12月にはウクライナ(関連情報)と、エストニア国外におけるプレゼンスを高めている。
他方サイベクサーのR&D活動をみると、2022年10月6日、エンタープライズ・エストニアの応用研究プログラムから90万ユーロの研究資金を受けて総額130万ユーロを投資し、サイバーレンジ技術を利用してスマートシティーモビリティソリューションのレジリエンシーを探究する研究プロジェクトを実施することを公表している(関連情報)。
スマートシティーのセキュリティ目標は、データをセキュアにするための伝統的なIT目標と、システムおよびプロセスの安全性とレジリエンシーを保証するためのOT(制御技術)目標の双方の上に設定されるべきだとした上で、サイバーレンジ技術は、スマートシティーのデバイスの仮想モデルと相互接続性の意味を構築、研究するために作用するとしている。
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