MONOist 脱炭素だけでなく資源循環でもSCMの重要度は高まっていますか。
ヴァン・ゲント氏 製品の過剰生産や廃棄を防ぐためにはより良い需給計画が重要になってきます。こうした無駄を減らすという意味ではSCMは以前から大きな効果を生み出しており、その重要性はさらに高まると考えています。
一方で、電子機器やバッテリー製品では、消費者の元に届けるまでのライフサイクル管理だけでなく、消費者の元から帰ってくるリサイクルなども進みつつあり、これらへの対応が求められています。消費者が製品を使用している期間やそこから戻ってくるところまでのモノの流れの管理が求められるようになっており、ブルーヨンダーとしてもこうした対応を進めていくつもりです。
また、リサイクルなどで回収することを考えた場合でも、より長い距離を輸送する必要が出てくると、その分CO2排出量は増えることになります。脱炭素と資源循環がどちらかに偏ることなく、両方がバランスをとれる形にするためには、これらの情報を一元的に管理して判断できるようにしなければなりません。そういう面でもブルーヨンダーの統合型プラットフォームが貢献すると考えています。
MONOist サステナビリティへの関心の高まりは、SCM変革への追い風になっていますか。
ヴァン・ゲント氏 間違いなく追い風になっています。サステナビリティとして企業がより正しい姿で環境問題や人権問題に向き合わなければならなくなっています。その点で環境については、サプライチェーン全体で評価するという動きが強まっているため、その情報統合が必要になっています。
ブルーヨンダーでは、サプライチェーンのE2Eでの統合管理を行えることから、サプライチェーン全体の最適化を図ることができ、コスト削減とカーボンフットプリント低減などの効果を両立させることが可能です。また、KPI(重要経営指標)の可視化と測定が進むことで、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーなどのサステナブルな取り組みが標準化できる点も利点です。こうした特徴を出しやすい環境が生まれていると考えています。
また、サステナビリティに関する取り組みとしても、新たな観点が次々に生まれており、ネイチャーポジティブなども注目されています。ただ、これらも何らかの指標で評価し、業務の中で標準化していく必要があることから、SCMのような仕組みが必要になります。そういう点も含めて、サステナビリティへの取り組みとSCMは切っても切れないものだと考えています。
MONOist 米国ではトランプ政権発足以降、環境問題に対する取り組みが後退しているようにも見えますが、現在のサステナビリティへの関心が沈静化するような心配はありませんか。
ヴァン・ゲント氏 そういう心配もされていますが、大きな流れとしては変わらないと見ています。米国でもカリフォルニア州やワシントン州などもともと環境問題に熱心に取り組んでいた州は厳格な規制を維持しています。
さらに、グローバル企業は欧州と同様の厳しいサステナビリティ基準を持ち、長期的視点で投資を継続していく方向性を変えていません。そもそもサプライチェーンそのものがグローバル化しており、1か国の動向だけで左右されるものでもなくなってきています。グローバルな基準の中で動くものなので、そういう動きを見極めながら取り組みを進めていくつもりです。
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