解析モデルを「円筒状の絶縁被覆とお考えください」と述べましたが、今度は導体を考えます。導体は図3で示した内側半径r1がゼロの中実円筒(円柱)と考えることができます。導体内部の温度分布の計算では、前項のr1がここでは外径に等しくなるため、外径をrinnerと表記します。図4に解析モデルを示します。
導体内部の温度分布を求めましょう。マイナスのrの世界へ熱は移動できないため、r=0での熱の流れはゼロとなり、次式が成立します(式10)。
熱流束は次式でした(式11)。
式11にr=0を代入すると都合が悪くなります。よって、中実円筒の場合はC1=0となります。
使うことのできる境界条件は、外周面の温度です。境界条件は以下です(式12)。
C1=0と上式を式9に代入します(式13)。
さらに、上式を式9に代入します(式14)。
Tinnerは次に述べる被覆内の計算結果を使います。
微分方程式の解(式11)をそのまま使いますが、被覆内部では発熱はないとします。導体での全発熱量は式15で表されます。注意が必要なのは式15のAは導体側の単位体積当りの発生熱量です。
図3の内周面(r=r1)での熱流束は次式となります(式16)。
式16の関係を方程式の解である式11に代入します。式11のAは被覆側の発生熱量なのでゼロです。
被覆内部の熱流束は式18となります。
温度分布は次式となります(式19)。
境界条件を代入します。r=r1でT=T1、r=r2でT=T2ですね。
式20から式21を引き算しましょう。
上式は通過熱量と内周外周の温度差の関係式となり、参考文献[1]の式となりました。
次に、式20から式19を引き算します。
式24を式22で割り算しましょう。
式25も参考文献[1]に載っています。
熱伝達を含む伝熱計算は、主流の温度T∞が与えられ、熱伝達率を見積もって伝熱界面温度(この場合はT2)を求めるのが定石なので、式25ではなくT2を使った式を作ります。式21から式19を引き算します(式26)。
今度は式26を式22で割り算しましょう(式27)。
式27を式28のように変形します。
式28のT1−T2は式22の計算結果を代入することにし、被覆表面の温度T2は以下の式で求まります(式29、式30)。
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