円筒座標系の熱伝導について考えるCAE解析とExcelを使いながら冷却系設計を自分でやってみる(5)(3/4 ページ)

» 2025年04月15日 11時00分 公開

温度分布の数値例

 温度分布を計算して、CAE解析結果と比較しましょう。

 導体の発熱量と単位体積当たりの発熱量は次式で計算します(式31式32)。

式31 式31
式32 式32

 表1表2に数値代入例を示します。銅の熱伝導率は384[W/(m.K)]ですが、導体内部の温度分布を見るために、導体の熱伝導率を3[W/(m.K)]にしています。着色したセルには計算式が入っています。表1の値を「紙と鉛筆による計算結果」と呼びます。

導体と被覆の温度 表1 導体と被覆の温度[クリックで拡大]
導体と被覆の温度:計算式 表2 導体と被覆の温度:計算式[クリックで拡大]

 図5にCAE解析結果を示します。表3に紙と鉛筆による計算結果とCAE解析結果の比較を示します。両者は一致しました。

CAE解析結果 図5 CAE解析結果[クリックで拡大]
紙と鉛筆による計算結果とCAE解析結果の比較 表3 紙と鉛筆による計算結果とCAE解析結果の比較[クリックで拡大]

温度分布の考察

 図6に温度分布を示します。

温度分布 図6 温度分布[クリックで拡大]

 図6左図赤色プロット(紙と鉛筆 導体)は式14によるもので、緑色プロット(紙と鉛筆 被覆)は式28によるものです。両者が一致していることは分かりますが、導体内部の温度分布を詳しく見ましょう。

 図7に温度分布の拡大を示します。

温度分布の拡大 図7 温度分布の拡大[クリックで拡大]

 図7右図黒色○部の温度分布の傾きに注目します。「円筒座標系の半径座標rにマイナスはない」と述べました。つまり、半径がマイナスの世界に熱は伝わりません。半径方向熱流束はゼロなのです。この結果、フーリエの法則から温度勾配はゼロで、グラフの傾きは水平になるはずです。しかし、CAE解析結果のグラフの傾きはゼロになっていません。

 紙と鉛筆、CAE解析の双方における導体中心温度(最高温度)に違いはないので、特に問題視することではありませんが、「この筆者、また細かいこと言ってるよな〜」と思われそうです。

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