日本触媒が生成AIを業務適用 新規テーマと事業創出の確度向上/効率化を目的に人工知能ニュース

ストックマークと日本触媒は、日本触媒における新規研究テーマと新規事業創出の確度向上/効率化を目的とした生成AI(人工知能)活用の実証実験を終え、その成果の業務適用開始に至ったと発表した。

» 2025年03月28日 07時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 ストックマークと日本触媒は2025年3月27日、日本触媒における新規研究テーマと新規事業創出の確度向上/効率化を目的とした生成AI(人工知能)活用の実証実験を終え、その成果の業務適用開始に至ったと発表した。

 同実証実験は、日本触媒が保有する研究資料や技術報告資料などの社内文書と、ストックマークのナレッジグラフ構築技術や大規模言語モデル(Large Language Model、LLM)構築技術などの生成AI技術を組み合わせた実証実験となっており、日本触媒のソリューション事業拡大に向けた研究開発業務におけるプラットフォーム整備の一環として行われた。

実証実験の概要

 この実証実験は、日本触媒の保有技術を理解した生成AIの開発と、この生成AIを活用した新規用途探索の業務利用を目的としている。こういった生成AIの開発に当たって、ストックマークが提供するRAG(Retrieval Augmented Generation:検索拡張生成)実用化サービス「Stockmark A Technology(SAT)」を介して、データ構造化やナレッジグラフ構築などの技術を利用した他、同社の生成AI実装ノウハウを活用した。

ナレッジグラフ構築について

 膨大な情報から、自社技術の新規用途を確度高く効率良く発見するためには、言葉の意味(業界、企業名、製品名、機能特性など)に加え、言葉同士の関係性もAIが理解する必要がある。

 しかしながら、原料や素材の機能特性といった自社情報や、それらの用途探索で前提となるような市場先などの外部情報には、業界/企業固有の表現や複雑で難解なビジネス情報が多く存在しており、言葉の意味と関係性を理解するのは容易ではない。

 これを解決する効果的な手段として、SATの主要機能であるドキュメント解析とナレッジグラフ構築技術を利用し、日々更新される社内外の複雑な情報にも対応した日本触媒独自のナレッジグラフを構築した。

独自のLLMで技術情報を起点とした新規用途探索を実現

 構築したナレッジグラフと、ストックマークの生成AI実装ノウハウを盛り込んだ独自のLLMを活用することで、日本触媒の保有技術を起点とした新規用途の探索を実現。これにより、従来の新規用途探索では、個人が持ち得る知識と、限られた時間の中で調査していた市場リサーチなどの属人的な業務を高度化し、新規研究テーマや新規事業の構想を容易にできる可能性がある。

 今回の実証実験で、「棚卸しした自社保有コア技術情報や、製品/技術紹介資料の構造解析」と「自社技術情報を参照した生成AIによる新規用途の提示」という点において、有効と分かったため、業務適用の開始に至った。

構築した生成AIのイメージ 構築した生成AIのイメージ[クリックで拡大] 出所:ストックマーク

今後の展望

 今後は、書式が統一されていない、図表を含む複雑なレイアウトの社内文書も含めて、生成AIの活用について検証を進め、さらなる精度向上を目指すとともに、日本触媒の社内システムとの連携も検討していく。

 また、ストックマークが提供するナレッジマネジメントサービス「Anews」についても、業務への適用可能性を探り、より実践的な利用を進めることで、日本触媒における情報活用の高度化や、新規事業創出活動の促進を目指す。

 Anewsは、国内外における約3万5000Webサイトのニュース、特許、論文、官公庁の報告書などの公開情報に加え、組織に眠る膨大な社内情報まで、ビジネス領域で役立つさまざまな情報へ一括でアクセスできる。検索結果をAIが自動で要約するため、知りたい情報の全体像や要点を素早く把握できるだけではなく、ユーザーの興味関心をAIが学習し、パーソナライズされたニュースを毎日自動で配信する推薦機能により、業務における情報収集の幅と効率を高める。

 さらに、組織が注目している情報や特定の情報に詳しい知見者の発見も可能となっており、組織間の連携促進や業務知識の人材育成といった情報に関する組織課題の解決にも貢献する。

実証実験の背景

 日本触媒は、2030年に向けた長期ビジョンで、既存分野から成長分野への事業ポートフォリオ変革のため、収益性の高いソリューションズ事業の拡大を目標として掲げている。この目標に対し、R&D部門では、事業化促進や事業創出力強化などに取り組んでいるが、その中で、社内外の情報活用に関して、以下のような課題を抱えていた。

 社内情報の活用課題は「情報が整理されておらず、利用できる範囲が限られている」「必要な情報を見つけるのに時間がかかる」「情報が欠けている、信頼性が低いものがある」。

 社外情報の活用課題は「欲しい情報が取得できない、欲しい情報にたどり着くまでに時間がかかる」「情報量が多く、取捨選択や分析に時間がかかる」「事業創出などの経験を持つ人が少なく、属人的になってしまう」。

 そこで、これらの課題解決を目的に、ストックマークの生成AI技術に加え、社外情報を中心に同社が独自収集した豊富なビジネスデータと、日本触媒が保有する社内情報を活用した新規用途探索の実証実験を行った。

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