旭化成は、量子コンピュータとスーパーコンピュータを連携させたハイブリッドコンピューティングの量子化学計算により、高精度に窒化アルミニウムの物性値の算出に成功した。
旭化成は2025年3月11日、量子コンピュータとスーパーコンピュータを連携させたハイブリッドコンピューティングの量子化学計算により、高精度に窒化アルミニウムの物性値の算出に成功したと発表した。窒化アルミニウム結晶中の複合欠陥が、新たな量子ビットとして機能する可能性を明らかにした。
今回の研究では、量子ビットの特性を定量的かつ詳細に調査するため、コンピュータシミュレーションを活用した量子ビット材料探索を試みた。まず、東京大学物性研究所のスーパーコンピュータ「ohtaka」を活用し、300原子を含む計算対象を密度汎関数理論により計算。次に、ダウンフォールディング法により、高精度計算が必要な問題領域を抽出した。
抽出した問題に対し、Quantinuumの量子コンピュータ「H1-1」を用いて誤り耐性量子コンピュータ(FTQC)向けアルゴリズムを実行。その際、量子誤り検出(QED)符号を使用して量子ノイズの影響を軽減しつつ、現在の実機上で高精度なFTQCアルゴリズムの実行に成功した。
計算途中でエラーが発生した場合には、計算途中で実行するシンドローム測定により、そのエラーを検出する。エラーが検出された計算結果は破棄し、エラーが生じなかった計算結果だけで解析して、FTQCアルゴリズムを適用した。なお、FTQCアルゴリズムは、Quemixと東京大学、量子科学技術研究開発機構の3者が共同開発した確率的虚時間発展(PITE)法を用いた。
計算の結果、QEDにより誤差が削減し、窒化アルミニウム結晶中の複合欠陥の基底状態と励起状態を高精度に取得できた。これにより、現在の量子コンピュータハードウェアでも、理想的なFTQCマシンの98%の精度を達成できることを実証した。
計算結果を解析したところ、量子ビットとしてZrAlVN、TiAlVN、HfAlVN複合欠陥が高い可能性を秘めていることが示された。今後、FTQC向けアルゴリズムの実用化により、量子化学計算分野やマテリアルズインフォマティクス分野の発展が期待される。
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