連載第37回で回転1関節機構系(ピックアップヘッドの構想設計を想定)のモデリングを行った。図7に構想設計で用いた3種類のモデルを時系列で示す。
図7のモデルを用いて最終的に図8の結果を得た。
ここで起こる疑問は「なぜ3つのモデルを使用したのか?」「この手順が適切であったのか?」ということである。実は、設計とは仕様を満足する解を求めることであり、正解があるわけではない。その意味で、設計という行為は設計者のスキルと経験、勘に頼っている部分が多い。
しかしながら、これからの設計においては何らかの考え方にのっとった方法も必要と考える。そこで、ピックアップヘッドの例を設計視点で振り返ってみることにする。最も重要なのは、設計プロセス(図7に相当)の妥当性評価である。
設計プロセスを評価するために「DSM(Design Structure Matrix)」(参考文献[2])という手法を用いることにする。DSMはマトリクス表現に基づく、工程/組織設計のための手法である。後戻りや反復作業も含めて、複雑なプロセスの構造を簡潔に表現できるという特長がある。このDSMを図7のモデルで使用した変数間の依存関係を調べるために適用する。
図9左図に、図7の数学モデルの変数をDSMの縦軸と横軸に構成する。例えば、縦軸のElec.E(電圧)を定義するには、数学モデルの式から、R(抵抗)、L(インダクタンス)、i(電流)、Vemf(逆起電力)の情報が必要なので、依存度として、この場合は“9”と入力する。伝統的に依存度は1、3、9で表現し、数値が大きいほど依存度が高い。ここでは数値として9のみを使用している。このようにして、図9左図が完成する。
DSMの強力な機能として、パーティショニング(Partitioning)がある。これは、DSMの上三角部分にある数字を減らす、またはなるべく対角線に近づけるように、DSMの行および列の順序を入れ替える処理である。こうして得られた結果が、図9右図である。これから分かるように、一部を除いて大半が上三角部分には数値がない。これは縦軸の上の変数ほど、独立変数的要素が強く(他と関係なく値を決められる)、下の変数ほど従属変数的要素が強い(ある程度、周りの条件が決まらないと決められない)ことを意味する。
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